第187回防災アカデミーを開催しました

内容:臨海部の防災・減災は大丈夫?ーこれまでの災害教訓と今後の地域変容ー
講師:富田 孝史 さん
(名古屋大学減災連携研究センター教授)
日時:2023年4月24日(月)18:00〜19:30

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第136回げんさいカフェ(ハイブリッド)を開催、報告文を掲載しました

異常気象って何?どう備える?

ゲスト:名古屋地方気象台長 中三川 浩 さん
日時:2023月3月22日(水)18:00~19:30 
場所:名古屋大学減災館1階減災ギャラリー・オンライン
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦 さん
(江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 げんさいカフェは、「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」との共催で実施しています。

 今回のゲストは、気象庁でずっと長期予報に携わり「気候リスク対策官」の経歴を持つ名古屋地方気象台長の中三川浩さんに来ていただき、よく聞く「異常気象」というのはそもそもどういう意味か、我々はどう備えればいいか、ということをテーマにしました。

 異常気象とは、統計上、その季節、その場所で30年に一度くらいにしか起きない現象を言います。中三川さんによると、30年に一度というのは、だいたい人の一生のうちに1度か2度あるかないかの出来事というイメージなのだそうです。
 もちろん豪雨や高温だけではなくて、逆に干ばつや冷夏なども、30年に一度くらいの頻度でしか起きないような極端な現象はみな異常気象ということになります。
 地球全体の気温が上昇している今、30年に一度くらいの極端なことが結構ひんぱんに起きているような気がしますよね。でも、そうやって平年の気温や降水量も少しずつ変わっていきますから、異常気象と判断される値もまた、新しい30年の統計をもとに計算されて変化してくということです。

 さて、その異常気象にどう備えるかという点で、たいへん興味深かったお話が、実は、気象庁には「異常気象分析検討会」という組織があるということでした。
 もともとは気象庁の職員だけで異常気象の解析や検討をしていたそうなんですが、やはり衆知を集める必要があるということで、外部の大学や研究機関で気象を研究している先生たちにも参加してもらって「官学一体」の検討会を、定期的に、また異常気象が発生した場合には臨機に開いているそうです。委員は12人の研究者、作業部会にはさらに20人の研究者がいて、けっこう大掛かりな検討会です。
 この検討会、もともとは2005年から6年にかけての「平成18年豪雪」をきっかけにして生まれたとのことでした。この年、暖冬という予想がはずれ、日本海側の各地で列車が脱線したり立往生したりするような豪雪になってしまったのですが、なぜこのような異常気象が起きたのか検討するために、このような組織が必要だということになったのだそうです。
 中三川さんからは、検討会の成果の一例として、3年前の「令和2年7月豪雨」の分析についてお話いただきました。
 この豪雨、東海地方でも岐阜県に大雨特別警報が出たのが記憶に新しいところですが、特に熊本県の球磨川周辺で大規模な浸水が起きました。
 この時は、九州付近に「線状降水帯」が出現し、同じ地域に大雨がずっと降り続けるという現象が起りました。それがなぜあの場所で起きたのか、地球規模のデータを集めて検討会で解析したのだそうです。
 その結果、実は、インド洋の海面水温が高かったことと、その影響でその東側からフィリピンにかけてのアジアモンスーンの活動が低調だったこと、それらの影響もあって、日本付近を通る偏西風の北上が平年より遅れたこと、さらには太平洋高気圧の南西への張り出しが強かったことも加わって、ちょうど日本付近の梅雨前線に向かって、西側と南側から湿った空気がたくさん流れ込んで集中する形になっていたということがわかったということです。
 遠くインド洋の海面水温が、回り回って日本に大きな影響を与えていたということには驚かされました。

 こうした検討会による分析が、これからの防災に役立つことが期待されています。
 どういう条件の時に異常気象が起きるのか、そのメカニズムを解明することで、同じような条件になりそうな時にあらかじめ警戒を呼び掛けるといったことができる可能性があります。またコンピュータシミュレーションでそうした異常気象が再現できるようになると、長期的な異常気象の予報にも役立てることができるようになるかもしれないということでした。

 とはいえ、いまのところ、まだそれは研究途上。現時点でどう異常気象に備えるか、について中三川さんは、とにかく気象庁のウェブサイトを参考にしてほしいということでした。スマホでもパソコンでも「気象庁」カタカナの「キキクル」で検索してみてください。出てくる地図をクリックして、自分の住んでいる場所を探すと、危険度が色別で一目でわかるようになっています。(黄色、赤、紫、黒と事態が深刻になっていきます)
 河川氾濫の危険度の「洪水キキクル」と、土砂災害危険度をあらわす「土砂キキクル」、道路や家屋など浸水の危険度をあらわす「浸水キキクル」の3種類があります。
 気象庁のホームページ、昔は堅苦しい感じだったのですが、いつのまにかとても使いやすくなっていることを、教えていただきました。

 カフェの後半では、こうしたデジタル情報だけでなく、アナログの情報伝達も大事だという話になりました。
 これは中三川さんご自身の体験談なのですが、東京都内にお住まいの中三川のお姉さんとお兄さんのうち、2019年の台風19号=東日本台風の時に、お姉さんだけがいち早く避難されたそうです。その理由は、お姉さんが、近所にあった想定浸水深を示す看板を見て、近くの川が氾濫するとどれくらい水が押し寄せてくるかということを実感していたからなのだそうです。そして、避難していなかったお兄さんを電話で説得して避難してもらったとのことでした。
 気象庁でデジタル情報の解析をしている中三川さんのお姉さんとお兄さんが、道端の「看板」や「身内の呼びかけ」といったアナログ情報がきっかけで避難行動を決めたというのも面白い話です。
 確かに過去の水害では、自治体の首長さんが防災無線の放送で直接住民に避難を呼びかけたことで「ただごとではない」というメッセージがうまく伝わり、多くの方が避難したという事例もあるそうで、普段から災害にあまり関心を持っていない人に早めの避難をしてもらうためには、デジタルアナログを組み合わせた、いろんな工夫が必要だという話になりました。
 今回も、会場とオンラインあわせて175人の方にご参加いただきました。中三川さん、参加者のみなさん、ありがとうございました。

※中三川さんは、2023年4月現在、気象庁大気海洋部気候情報課長をされています。


→ポスター(PDF)

→過去のげんさいカフェの様子はこちら

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減災連携研究センター招へい教員

客員教授


新井伸夫
神戸大学大学院理学研究科地球科学専攻修士課程修了後、建設会社の技術研究所、シンクタンク、気象情報提供会社、名古屋大学減災連携研究センター特任教授を経て2022年4月より一般財団社団法人日本気象協会、参与。専門は、地至防災、地域防災、自然災害科学。博士(環境学)。


隈本邦彦
1980年上智大学卒業後、NHKに記者として入局。報道局特報部、社会部、科学文化部などの記者・デスクとして、主に地震、防災、医療関係を取材。2000年から2005年までNHK名古屋放送局報道部在籍。2005年NHKを退職後、北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット特任教授。2008年より江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授。2023年4月より同・特任教授。2025年4月より同・名誉教授。

阪本真由美
2010年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了。JICAで9年間国際協力に携わった後、(公財)人と防災未来センター主任研究員、減災連携研究センター特任准教授を経て、2017年4月より兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科。2020年4月より同・教授。専門は、防災危機管理、被災者支援、防災教育、国際協力。博士(情報学)。

宍倉正展
2000年千葉大学大学院自然科学研究科修了後、通商産業省工業技術院地質調査所に入所。現在は国立研究開発法人産業技術総合研究所で活断層や津波堆積物の調査・研究に従事。同・地質調査総合センター連携推進室国内連携グループ長。2016年より東京大学大学院理学系研究科の兼任教授。博士(理学)。

田中隆文
1986年名古屋大学大学院農学研究科(現:生命農学研究科)林学専攻博士課程満期退学後、農学部に採用。想定外を生まない防災科学をめざし「知の野生化」を提唱。2024年3月に定年退職後は、障害者の公共交通機関利用に寄りそうガイドヘルパーの経験を積みつつ、インクルーシブな防災の実効化を探求。専門は砂防学および地区防災計画学。博士(農学)。

西川智
1982年東京大学工学系大学院修了。国土庁防災局、国連人道問題局、東京都庁、アジア防災センター、内閣府(防災)、国土交通省、水資源機構等を経て2018年名古屋大学減災連携研究センター教授。この間、雲仙普賢岳大火砕流、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、インド洋津波等に対応。2023年4月よりJICA国際協力専門員(総合防災)及び東北大学特任教授。地域安全学会理事、事業継続推進機構副理事長、日本防災プラットフォーム顧問。専門は、防災行政、国際防災協力、企業防災とBCP、防災意識啓発手法等。博士(工学)。
hirayama_katsuya
平山克也
1996年京都大学大学院工学研究科土木工学専攻修了後、運輸省港湾技術研究所(現:港湾空港技術研究所)入所。多方向不規則波の造波・変形実験、波動モデルの開発や沿岸域での波浪変形計算などに従事。専門は海岸工学。2008年4月より波浪研究チームリーダ(現:波浪研究グループ長)。博士(工学)。

廣井悠
2007年東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻・博士課程を中退、同・特任助教、2012年名古屋大学減災連携研究センター准教授、2016年4月東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻・准教授を経て、2021年8月より同・教授。2023年4月より同・先端科学技術研究センター、教授。博士(工学)、専門社会調査士。専門は都市防災、都市計画。平成28年度東京大学卓越研究員。2016-2020年JSTさきがけ研究員(兼任)。


藤原広行
1989年京都大学大学院理学研究科中退。科学技術庁国立防災科学技術センター(現:防災科学技術研究所)入所。強震観測網の整備、地震動予測地図の作成、統合化地下構造データベースの構築等に従事。専門は、応用地震学。マルチハザードリスク評価研究部門長。博士(理学)。

細川直史
1989年徳島大学大学院工学研究科修了。1991年自治省消防庁消防研究所(現総務省消防庁消防研究センター)採用。リモートセンシングや防災情報システムに関する研究に従事。2003年総務省消防庁防災課長補佐。専門は情報工学(パターン認識)。2018年より消防庁消防大学消防研究センター技術研究部長。博士(工学)。

堀高峰
1998年京都大学大学院理学研究科修了後、日本学術振興会特別研究員を経て1999年から海洋研究開発機構(旧海洋科学技術センター)で、海溝型巨大地震発生メカニズム解明ならびに発生予測の研究に従事。2019年から同・海域地震火山部門・地震津波予測研究開発センター長、上席研究員。博士(理学)。

宮腰淳一
1992年東北大学大学院工学研究科を修了後、清水建設に入社。その間、2002年に名古屋大学大学院工学研究科より博士(工学)を取得。2012年から2013年の2年間、名古屋大学減災連携研究センターの寄附研究部門准教授を経て、2014年から清水建設株式会社技術研究所安心安全技術センター、主席研究員。

客員准教授


荒木裕子
2015年神戸大学大学院工学研究科博士後期課程修了。建築設計事務所、人と防災未来センター主任研究員、減災連携研究センター特任准教授を経て、2022年4月より京都府立大学生命環境科学研究科准教授。専門は地域防災・地域復興。博士(学術)。ー級建築士。

平井敬
2013年名古屋大学大学院環境学研究科博士後期課程修了。名古屋大学大学院環境学研究科助教、名古屋大学減災連携研究センター助教を経て、2023年4月より兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科准教授。専門は地震学、地震工学、歴史地震。博士(工学)。
yamazaki
山﨑雅人
2010年上智大学大学院地球環境学研究科地球環境学専攻博士後期課程修了。博士(環境学)取得。産業技術総合研究所博±研究員、立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構博士研究員、名古屋大学減災連携研究センター特任助教、同センター特任准教授を経て、2022年より応用地質株式会社共創Lab主席研究員。専門は災害の経済影轡評価。

招へい教員

  • 倉田 和己
  • 武村 雅之
  • 蛭川 理紗
  • 光井 能麻
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第34回特別企画展「関東大震災(第1部)」5/10(水)~8/10(水)開催しました

第34回特別企画展「関東大震災(第1部)」(3部構成)開催しました
たくさんのご来場をいただき、まことにありがとうございました。

はじめに

 私は30年間、1923(大正12)年に発生した関東大震災の研究を続けてきた地震学者です。震源、揺れ、被害について研究し、ここ10年余は震源域の真上にあたる神奈川県と最大の被害を出した東京都23区を中心に、現地調査を行ってきました。
その間、様々な疑問の解消に挑戦してきました。そもそも、震災を引き起こした地震の正体は。マグニチュード7.9というが根拠は。本震に引き続く余震の発生状況は。揺れ、火災、土砂災害、津波による被害は。人的・物的被害数や経済被害額は。大量の避難者の動向とその救済は。江戸・東京のほかの地震災害は。なぜ東京で最も大きな被害を出したのか。そして、東京市民は如何にして立ち直り、東京は復興したのか。関東大震災から100年を記念してこれらの成果の一端をみなさんに伝えたい。自然災害大国日本に生きるみなさんが災害を考える上での参考になれば幸いです。

                 【監修】名古屋大学減災連携研究センター
特任教授 武村雅之

【第1部】5月10日(水)~8月10日(水)

第1部チラシのダウンロードはこちらから


【スペシャルギャラリートーク】(13:30~1時間弱)
講師:名古屋大学減災連携研究センター特任教授武村雅之
①7月15日(土)「地震の正体を探る-関東大震災と地震学-」(終了)
②9月16日(土)「震源直上で何が起こったか?-神奈川県の関東大震災-」
③2月3日(土)「関東大震災が造った東京-帝都復興事業とその後-」

【展示風景】

貴重な資料もご覧いただけます


第1回スペシャルギャラリートーク(7/15)では多くの方にご参加いただきました。

※どなたでも、ご見学・ご参加いただけます。
※5名以上の団体は見学予約をお願いします。見学予約はこちらから。
※予約は3ヶ月前から受付けます。③の受付開始は11月1日です。
※諸事情により、日程、内容等が 変更になる場合がございます。ご了承ください。
※追加情報は、その都度HPに掲載しますので、ご確認ください。

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第186回防災アカデミー(ハイブリッド)を開催しました

内容:防災のフロンティアと当事者の拡大~BCP、国際協力、防災産業~
講師:西川 智 さん
(名古屋大学減災連携研究センター教授)
日時:2023年3月14日(火)18:00〜19:30
会場:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン
※名古屋大学最終講義となります。

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トルコ・シリア地震の速報パネル展示を行いました。

【お知らせ】

◆トルコ・シリア地震の速報パネル展示および関連図書展示を行いました。
多くの方にご見学いただきました。ありがとうございました。

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バーチャルギャラリートークは引続きご覧いただけます

ぶるる画像
    ● バーチャルギャラリートーク ●

 減災館の新名物”バーチャルギャラリートーク”をお楽しみください。 Read More »

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第185回防災アカデミー(ハイブリッド)を開催しました

内容:知っておきたい!災害時の食と栄養
講師:笠岡(坪山)宜代 さん
  (国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国際災害栄養研究室 室長)
日時:2023年2月27日(月)18:00〜19:30
会場:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン

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第135回げんさいカフェ(ハイブリッド)を開催しました

災害時のライフライン途絶を想定したエネルギー確保について考える

ゲスト:ライフライン防災研究者 小沢 裕治 さん
   (名古屋大学減災連携研究センターライフライン防災産学協同研究部門特任准教授)
日時:2023月2月21日(火)18:00~19:30 
場所:名古屋大学減災館1階減災ギャラリー・オンライン
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦 さん
(江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 げんさいカフェは、「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」との共催で実施しています。

 南海トラフ巨大地震では、電気ガス水道などのライフラインが途絶することが想定されています。そこで今回のカフェでは、ライフライン防災研究者である小沢裕治さんにゲストに来ていただき、どのような備えが必要なのか考えました。
 まず大地震で停電が起きる理由について、大規模停電=ブラックアウトが起きた2018年の北海道胆振東部地震を例にお話いただきました。
 この時の地震では、震源の近くに苫東厚真火力発電所という大きな発電所があったためだということは、みなさんも覚えていらっしゃると思いますが、実はそれだけではありませんでした。
 震源近くの苫東厚真発電所だけではなく他の発電所もドミノ倒しのように次々と止まってしまったのだそうです。遠く離れた水力発電所とか風力発電所まで止まったそうで、結局北海道全域で停電となってしまいました。
 そうしたドミノ倒しが起きた理由の1つは「私たちが使っている電力が交流だから」ということ。東日本では周波数が50ヘルツ、西日本では60ヘルツで、1秒間に50回とか60回プラスマイナスが入れ替わっています。ふだんはこれが安定しています。
 そして、もう1つの理由は、電力はある地域で需要と供給が常にバランスするようにコントロールされていなければならないということです。
 地震が起きると、まず需給のバランスが崩れます。地震の時には、電車が止まったりするので需要のほうも少し落ちるのですが、それよりも発電所が止まって供給のほうが大きく下がってしまうと、地域全体で電力のエネルギーが足りなくなり、交流の周波数が下がってしまうのだそうです。そうなると普段その周波数に合わせて回転している工場などのモーターが壊れたり、発電所の発電機自身も壊れてしまったりする恐れがあります。
 同じ周波数を維持するのがいかに大変か、カフェでは、自転車で同じ速度で走り続けるということに例えて、小沢さんが下のようなオリジナルの図で説明してくださいました。

 こうした大停電は南海トラフ地震の時にも起きる可能性が高いとされています。
 国の被害想定では、停電は2,600万件から3,000万件で起き、東日本大震災の時の4倍以上になると予想されています。
 そして回復までには少なくとも1週間ほどがかかるとされているのです。
 一方、地方自治体や災害拠点病院など、いざという時に住民を助ける側の施設は、72時間=3日間の停電に耐えられるよう自家発電設備の燃料を確保するという計画となっています。つまり停電が1週間も続くと、自家発電の燃料が足りなくなる恐れがあるわけです。
 これについて国の計画では、72時間以内には緊急物資輸送路が再開するはずなので、自家発電の燃料は届くという想定になっています。
 これじゃ綱渡りだな、という感じがしますが、こうした想定でさえ、2つの点で不安があると小沢さんはおっしゃってました。

 
 1つは12年前の東日本大震災の経験です。この時、多数の自家発電設備がうまく動かなかったということです。総務省消防庁が自家発電設備4,800台余りについて調べたところ、そのうち5%くらいの233台が、東日本大震災の時に、実際に動かなかったり、異常停止したりしたのだそうです。
 その理由は、メンテナンス不良や燃料切れなどだったそうですが、いつも点検をしたり訓練したりしていないとダメですね。消防庁も自家発電設備の点検を促進するため、消防法の一部で緩和、強化を織り交ぜた改訂を行いました。
 そしてもう1つが燃料を運搬するタンクローリーが足りなくなる恐れがあることです。
 病院や役所などの大規模な自家発電設備の多くはA重油を使っているのですが、それを運ぶことのできるタンクローリーは全国で1,000台くらいしかないのだそうです。
 南海トラフ地震の被害想定では、被災地では、300くらいの市町村役場に対して4日に1回、150くらいの災害拠点病院に対しては1日1回の給油が必要だとされていて、全国で1,000台くらいのタンクローリーではとても足りないという事態が考えられます。
 もっと増やすことができないのかと思うのが自然ですが、普段はA重油のタンクローリーそんなに需要がないのだそうで、そう簡単ではないようです。ガソリンや軽油を運ぶタンクローリーは別に6,000台近くあるんですが、油の種類が違うと流用はできないのだそうです。小沢さんは、今後根本的な対策が必要だとおっしゃっていました。

 小沢さんからは、各家庭での停電への備えについても、お話がありました。
 いちばん最近の変化は、電気自動車やハイブリッド車の普及です。これはいざという時に電源になります。またカセットコンロのボンベで動かせる小規模の発電機などもありますから各家庭で備えをしてほしいとのことでした。

 会場からは、A重油を運べるタンクローリーが少ないことも心配だが、それを運転する資格を持ったドライバーが緊急時に確保できるのかという質問や、スマホ充電のための直流電源の確保が大切になっているのではないかという意見も出て、討論が盛り上がりました。小沢さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

 

 

→ポスター(PDF)

→過去のげんさいカフェの様子はこちら

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「2023年度 特別企画展 展示スケジュール 」を掲載いたします

2023年度特別企画展の展示スケジュールを掲載いたします。
皆さまのご来館をお待ちしています。

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