研究プロジェクト

減災連携研究センターでは、地域特有の大規模災害の減災戦略を構築するため、「東海地方を襲う巨大自然災害予測と総合減災対策による安全安心な地域の実現」を目指した学術プロジェクトを推進していきます。これにより、①南海トラフ巨大地震発生に対する減災 シナリオ作成、②南海トラフ巨大地震の高精度ハザード・被害予測、③スーパー伊勢湾台風の高精度ハザード・被害予測、④次世代モニタリング手法の開発・高度化、⑤最適な防災水準についての社会的合意形成、を分野間・産学官・地域・大学間等、様々な連携を図りながら実現していきます。

産官学協働による広域経済の減災・早期復旧戦略の立案手法開発

南海トラフ巨大地震については、考えられる最大規模が発生した場合、死者は23万人余り、経済被害は直接被害額が171兆円、間接被害額が36兆円にも上ると想定されています(2019年度に公表された中央防災会議の試算)。
このような甚大な被害を考えると、犠牲者の減少を目指した事前の対策はもちろんのこと、地域と広域の2つの経済的視点から事前準備を進め、事後の経済被害軽減と早期復旧に向けた態勢づくりが、この「国難」を乗り越えるために解決すべき重要課題と言えます。
被災者がいち早く日常生活を取り戻せるようにするために、個別企業のBCPのみならず、“地域ぐるみでの”BCPを作成することにより、広域経済を一日でも早く復旧させることが求められています。
本研究では、これらの課題を解決し、大規模災害が発生した際の広域的な経済への影響を大幅に軽減することを目指します。
産官学協働による広域経済の減災・早期復旧戦略の立案手法開発のHP

研究の目的1
研究の目的2

東海圏減災研究コンソーシアム

日本の中心に位置し、日本最大の産業拠点であるとともに、南海トラフ巨大地震等の危険が指摘される東海圏にとって、有効な防災・減災戦略の構築は国家的な重要かつ急務の課題です。安全・安心な地域社会の実現を目指すため、東海圏の6大学(岐阜大学、静岡大学、名古屋大学、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学、三重大学)が連携し、自然災害を軽減するための研究を強力に推進することを目的に発足しました。
東海圏減災研究コンソーシアムのHP

コンソーシアムの取り組み

コンソーシアムを構成するセンター

  • 岐阜大学工学部附属インフラマネジメント技術研究センター
  • 静岡大学防災総合センター
  • 名古屋大学減災連携研究センター
  • 名古屋工業大学高度防災工学センター
  • 豊橋技術科学大学安全安心地域共創リサーチセンター
  • 三重大学地域圏防災・減災研究センター

南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト(平成25~令和元年度)

南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトは、南海トラフ巨大地震・津波による被害軽減を目的に、巨大津波発生の解明や、長期評価を実施するためのデータ取得、広域の被害予測シミュレーションを行い、防災・減災対策や復旧復興計画の検討を行うもので、文部科学省の委託で、名古屋大学が、海洋研究開発機構、東京大学、京都大学、東北大学、防災科学技術研究所等と連携して進めるプロジェクトです。減災連携研究センターは、地域連携減災研究のとりまとめを行うとともに、地震動や津波に伴う被害予測シミュレーションや、地域の防災・減災対策を推進するためのシステム開発を中心に取り組みます。2013年9月にキックオフシンポジウムを行い、本格的に活動を始めました。
南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトのHP

南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト

地域協働と情報連携による地域密着型減災シンクタンク構想(平成26~平成30年度)

内閣府の戦略的イノベーション創造プロジェクト(SIP)の研究開発課題「レジリエントな防災・減災機能の強化」におけるプロジェクトを進めています。「地域協働と情報連携による地域密着型減災シンクタンク構想」の実現を目指し、地域における隣接市町村間や産業間の協働・連携を強化するとともに、「地域災害情報解析ステーション」など、自発的減災行動の誘発や迅速な災害復旧に資する「減災情報システム」の開発を進めています。また中核機関として、他のプロジェクト採択機関で開発される様々な災害情報システムやアプリケーションを取りまとめ、それらエッセンスやノウハウを抽出し、広く他地域へ展開する手段について検討します。

地域協働と情報連携による地域密着型減災シンクタンク構想

地域力向上による減災ルネサンス(平成25~平成29年度)

愛知県内の人口10万人以下の市町村の中から、地形・地質、自然災害履歴、災害危険度、産業構造、歴史的背景が異なる市町を毎年1カ所(5年で5カ所)モデル地区として選定します。モデル地区では、地域の歴史的・地理的資料や人材等の災害対応力、最新の地震防災科学技術研究に基づく防災・減災に関する情報収集を行います。これらを基に、自治体職員、地域の企業、住民等でワークショップを開催し、適切な防災・減災対策への道筋をつけます。プロジェクト終了後は5市町と同様な地域特性を有する他の市町村への本研究成果の普及・展開を目指します。
(文部科学省委託業務「地域防災対策支援研究プロジェクト」)
地域防災対策支援研究プロジェクト「地域力向上による減災ルネサンス」のHP

レジリエントな都市圏創造を実現するプランニング手法の確立(平成26~28年度)

レジリエントな都市を形成するためには、長期的視野の確保、マルチハザードリスクの想定、都市圏スケールを考慮した計画論が重要な課題となります。本研究プロジェクトは、広域・地区を対象にした様々なスケールのワークショップを通じた計画立案手法を確立し、かつステークホルダーの役割を検証することを通じて、レジリエントなコミュニティが備えるべき要件と必要な社会制度を明確にします。特に、中京圏で主要なステークホルダーを集め、地域・産業の将来像と広域エリア全体の将来像をそれぞれ提案し、地域の実情に即した広域的調整を可能とするプランニングガイドを策定することを目指します。
(JST「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」研究開発領域)

先進的な防災教材の研究開発

地震の揺れをリアルに体感できる教材や、耐震工学の研究成果を学ぶことができる教材の開発を行っています。リニアガイドレールを用いた4層構造の「高層ビル台車ぶるる」は、各層の間をロック・アンロックすることにより、建物高さによる揺れ方の違いを手軽に体感できる大型の模型教材です。「ぶるるGlass」は、ヘッドマウントディスプレイと三次元バーチャル室内映像を組み合わせた仮想現実を作り出し、巨大地震による揺れの被害をリアルにシミュレーションします。また好評だった名古屋市の精細な空中写真に、天井からプロジェクション・マッピングで様々な空間情報を重ねる装置を開発しました。自分の住宅や職場が、どのような地形上の特徴を持ち、災害危険度とどう関係するのかを視覚的に理解できます。最新の建設技術であるBIM(Building Information Modeling)を活用した「減災館BIM」は、減災館の建物の構造から内装、展示物までを3Dモデルとして可視化したシステムで、普段見ることのできない減災館の耐震実験設備などをバーチャルに見ることができます。

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体感型振動・防災教材「ぶるる」シリーズの開発を継続しています。地盤・建物の共振を表現できる振動模型「地盤ぶるる」、東日本大震災でも問題となった長周期地震動による高層建物の揺れと室内被害を2次元ロングストローク振動台と映像で再現する「BiCURI」を開発してきました。屋上の振動実験室はアクチュエーターにより任意の波形で部屋全体を揺らすことができます。実験室の揺れと同期させた室内映像と音響により、地震による建物の揺れを五感で体感することができます。さらに詳細な地形模型に対し、標高データで映像補正したハザードマップ等を映し出す「3Dビジュアライズ」は3次元情報に基づく災害リスクの認知を可能にします。

この他、手軽な媒体で効果的な啓発教材の開発も進めています。角度により見える図柄の変わるカード(レンチキュラー印刷)を用いて、地盤条件とハザードマップを容易に重ねて見ることのできる「MAGICぶるる」、身近な家族に起こり得る災害時のシナリオを、防災に関する知恵とともにまとめた小冊子「筋飼家のものがたり」と「高居家のものがたり」、同様の内容をウェブ上で見ることのできる災害シナリオ体験アプリケーション「escape」など、普及促進を目的とした教材開発にも力を入れています。

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エネルギー防災(中部電力)寄附研究部門

地震などの自然災害に対して、エネルギー供給における災害対応力の向上や発災後の早期復旧対策の高度化のためには、歴史地震被害の検証によるハザード評価やエネルギー供給機能における耐震性の実力評価、および被災時の需給バランスの高精度な把握が必要不可欠です。そこで本寄附研究部門では、エネルギーの安定・安全な供給を通して地域防災力の向上に資することを目的とし、以下の個別研究テーマを推進します。

  1. 南海トラフ巨大地震による地震動および津波規模の推定の高度化
  2. 南海トラフ巨大地震発生時におけるエネルギー供給設備の被害想定の高度化
  3. 発災時の施設機能維持に向けた事前対策および早期復旧対策の検討

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ライフライン防災(東邦ガスネットワーク)産学協同研究部門

水道、電気、ガスなどのライフラインは重要な社会基盤であり、非常時にも被害を最小限にとどめ、機能 維持、早期復旧を図ることは 非常に重要です。
未来社会のレジリエンスとサステナビリティの強化に資するため、近年の自然災害による被災事例に対する最新の学術的知見を総動員した分析に基づき、迫りくる南海トラフ地震や伊勢湾台風などの大規模災害の軽減を担う、ライフラインの防災・減災に関する以下の個別研究テーマを推進します。

  1. 大規模災害に対するライフライン・ システムの脆弱性評価
  2. 大規模災害に備えるライフライン事業の効果的BCP対策の設計
  3. 低平地における各種災害等の被害予測および対応策の検討と評価

ライフライン防災(東邦ガスネットワーク)産学協同研究部門《メンバー紹介》へ

地域社会減災計画(応用地質)寄附研究部門(2012~2021年度)

これまでに蓄積された地球物理中心の理学的知見ならびに土木工学、地質工学などの技術を駆使して、特に東海地方を中心に地震や複合災害に対する地域社会の減災計画構築に資するべく一連の研究開発活動を展開します。

東日本大震災の苦い経験に徹底的に学び、迫りくる大災害で予測される被害を経済被害として評価し、その経済被害を指標に地域目線の減災計画を案することを当面の目標とします。具体的な研究内容を以下に示します。

  1. 東海地方の地盤情報・地理情報分析に基づく地盤モデルの高度化およびそれに基づく被害予測手法の高度化
  2. サプライチェーン構造を考慮した経済均衡モデルに基づく災害の経済被害予測手法の開発
  3. 経済被害を指標とした社会資本の効果的な強化策等、減災策の提案・提言

→地域社会減災計画(応用地質)寄附研究部門成果報告書