第194回防災アカデミー(ハイブリッド)を開催しました

内容:被災地調査から考える災害レジリエンスの現状と課題
講師:大原 美保 さん(東京大学大学院情報学環教授)
日時:2023年12月14日(木)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン

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第144回げんさいカフェ(ハイブリッド)を開催、報告文を掲載しました

形状記憶合金で耐震!?

ゲスト:構造工学者 荒木 慶一 さん
(名古屋大学大学院環境学研究科教授/減災連携研究センター兼任・協力教員)
日時:2023月11月20日(月)18:00~19:30
場所:名古屋大学減災館1階減災ギャラリー・オンライン
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦 さん
(江戸川大学特任教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 げんさいカフェは、「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」との共催で実施しています。

  

形状記憶合金といえば、お湯につけると元の形に戻るといったイメージですよね。そういえば昔、学習雑誌の付録についていたという思い出をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回のカフェは、それと違って、温度は常温のままで、曲げても元の形状に戻るという性質を持つ「超弾性合金」を使って耐震化を実現しようというお話です。
そんな魔法のような素材を、建物の建築材料になるくらいのある程度の大きさに、しかもリーズナブルな価格で、特殊な技術を使わずそれほど時間をかけずに作り出す技術が必要なのですが、それがついに実用化の域に達したということで、その開発者の一人である荒木さんにお話を伺いました。

ゲストの荒木さんが、げんさいカフェの会場に、その超弾性合金の棒を持ってきてくださいました。ボールペンくらいの太さ、長さ50センチほどの赤銅色の棒です。
カフェのお客さんにも超合金体験をしていただきましたが、確かに、力を入れると一旦は曲がるんですが、手を離すとすぐに元のまっすぐな棒に戻ります。何度やっても元通り。まるで柳のように、あるいはゴムのように、すぐ元に戻るのです。
なるほどこれが新しい形状記憶合金かと、新素材との感動的な出会いとなりました。

  形状記憶合金を曲げて、手を離すと元の形状に戻ります。

感動的と言えば、この新素材の開発秘話がとても感動的。
2006年の1月、東北大学の研究グループが鉄、ニッケル、コバルトを主成分とする新しい形状記憶合金の開発に成功したことを、東京で開かれたシンポジウムで発表しました。それまでの形状記憶合金に比べ、価格も安く、比較的短時間に作れそうだという内容ですから、これは耐震建物につながるかもと直感した荒木さんは、そのシンポジウムに参加し、さらにシンポジウム後の懇親会に参加して、開発者の東北大学の先生たちに直接共同研究を申し込んだということです。
私も長いこと科学の世界を取材してきましたが、全く違う分野の先生にいきなり共同研究を申し込むという話は聞いたことがありませんでした。でも、この少し無謀ともいえる荒木さんの行動がいまの成功につながりました。

ただ建築材料になるくらいの大きさの形状記憶合金をつくる方法の開発は、簡単ではありませんでした。まさに試行錯誤の連続だったそうです。
しかしその試行錯誤の結果、金属の結晶の様子が変化する摂氏726度をはさんで、何度も温度を上げ下げすることで、金属内部で大きな結晶が成長することがわかり、それこそリーズナブルな価格で、しかも研究室とかではなくふつうの工場で、それほど時間をかけずに建築材料になるくらいの大きさの形状記憶合金が作れる技術が実現したのだそうです。

カフェではその形状記憶合金を使った耐震実験の映像を見せていただきました。
鉄骨を組んで、斜めに筋交のようにブレースという金属の棒を入れ、それを大型の振動台で揺らしてみます。
従来の鉄製のブレースだと、すぐに伸びてダメになってしまうのですが、新素材の超弾性合金をブレースの一部に使うと、揺れでいったん伸びてもすぐに元に戻り、大丈夫だったという結果が得られました。繰り返しの地震にも強いことも実証されたそうです。

この形状記憶合金を使った耐震補強ブレースは、去年(2022年)、日本の住宅メーカーが商品化しました。形状記憶合金による耐震の初の実用化です。

いまは建築基準法の縛りがあって、新築建築にはまだ使えないそうですが、将来は、建物を建てる時に、地震で揺れた時に一番力のかかる場所、例えば柱と梁の接合部あたりに、この新素材を使うことで、地震に強い建物を実現していきたいというお話でした。
ただ鉄筋コンクリートの柱が地震で折れる時には、鉄筋の周りを囲ったコンクリートも崩れ落ちてしまうことが多いんですが、そのコンクリートにもセメントに繊維を混ぜ込んで簡単には落ちないものにしておくと、形状記憶合金の鉄筋とその新しいコンクリートの力が相まって強い地震に襲われても大丈夫という建物が実現する可能性があるそうです。

そして木造住宅の場合は、コンクリートの基礎に柱や土台を留めるボルトにこの形状記憶合金を使うアイデアがあるそうです。地震の揺れがやってきても、ボルトがちょっと伸びて、すぐ元通り。こうすると木造住宅の耐震性の向上につながります。

実はアメリカ西海岸のシアトルでは、実験的に形状記憶合金で鉄筋の一部を置き換えた橋がすでに建設されているそうです。その写真も拝見しましたが、なんか新しい素材で耐震化ってわくわくする研究ですね。

後日談として伺ったのは、荒木さんが突然共同研究を申し込んだ東北大学の先生方も、後で聞いてみると、実は、荒木さんのアイデアは絶対実現不可能だろうなと思っていたんだそうです、その時の相手の先生の言葉は「わかりました、じゃあ実用化してください」だったそうです。だから去年、ついに実用化できたという報告をした時にはとても嬉しかったということでした。
でも、実は新素材開発の苦労の中で、単結晶化が難しいと考えられていた太い径の棒の方がむしろ単結晶化しやすいということがわかり、それが理論的にも解明されたということで、東北大の先生からは感謝されたということでした。

今回も会場とオンラインで144人の方にご参加いただきました。
荒木先生、参加者のみなさん、ありがとうございました。

→ポスター(PDF)

→過去のげんさいカフェの様子はこちら

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第193回防災アカデミー(ハイブリッド)を開催しました

内容:リモートセンシングによる広域災害の把握
講師:松岡 昌志 さん(東京工業大学環境・社会理工学院教授)
日時:2023年11月30日(木)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン

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第34回特別企画展「関東大震災(第3部)」期間:11/29(水)~2024/3/28(木)開催しました

第34回特別企画展「関東大震災(第3部)」(3部構成) 開催しました
たくさんの方にご来場をいただき、まことにありがとうございました。

はじめに

 私は30年間、1923(大正12)年に発生した関東大震災の研究を続けてきた地震学者です。震源、揺れ、被害について研究し、ここ10年余は震源域の真上にあたる神奈川県と最大の被害を出した東京都23区を中心に、現地調査を行ってきました。
その間、様々な疑問の解消に挑戦してきました。そもそも、震災を引き起こした地震の正体は。マグニチュード7.9というが根拠は。本震に引き続く余震の発生状況は。揺れ、火災、土砂災害、津波による被害は。人的・物的被害数や経済被害額は。大量の避難者の動向とその救済は。江戸・東京のほかの地震災害は。なぜ東京で最も大きな被害を出したのか。そして、東京市民は如何にして立ち直り、東京は復興したのか。関東大震災から100年を記念してこれらの成果の一端をみなさんに伝えたい。自然災害大国日本に生きるみなさんが災害を考える上での参考になれば幸いです。

                 【監修】名古屋大学減災連携研究センター
特任教授 武村雅之

【第3部】11月29日(水)~2024年3月28日(木)

第3部チラシのダウンロードはこちらから

【展示風景】

【スペシャルギャラリートーク】(13:30~1時間弱)
講師:名古屋大学減災連携研究センター特任教授武村雅之
①7月15日(土)「地震の正体を探る-関東大震災と地震学-」(終了)
②9月16日(土)「震源直上で何が起こったか?-神奈川県の関東大震災-」(終了)
③2024年2月3日(土)「関東大震災が造った東京-帝都復興事業とその後-」(終了)

※どなたでも、ご見学・ご参加いただけます。
※5名以上の団体は見学予約をお願いします。見学予約はこちらから。
※予約は3ヶ月前から受付けます。③の受付開始は11月1日です。
※諸事情により、日程、内容等が 変更になる場合がございます。ご了承ください。
※追加情報は、その都度HPに掲載しますので、ご確認ください。

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第34回特別企画展「関東大震災(第2部)」期間:8/30(水)~11/24(金)開催しました

第34回特別企画展「関東大震災(第2部)」(3部構成) 開催しました
たくさんの方にご来場をいただき、まことにありがとうございました。

はじめに

 私は30年間、1923(大正12)年に発生した関東大震災の研究を続けてきた地震学者です。震源、揺れ、被害について研究し、ここ10年余は震源域の真上にあたる神奈川県と最大の被害を出した東京都23区を中心に、現地調査を行ってきました。
その間、様々な疑問の解消に挑戦してきました。そもそも、震災を引き起こした地震の正体は。マグニチュード7.9というが根拠は。本震に引き続く余震の発生状況は。揺れ、火災、土砂災害、津波による被害は。人的・物的被害数や経済被害額は。大量の避難者の動向とその救済は。江戸・東京のほかの地震災害は。なぜ東京で最も大きな被害を出したのか。そして、東京市民は如何にして立ち直り、東京は復興したのか。関東大震災から100年を記念してこれらの成果の一端をみなさんに伝えたい。自然災害大国日本に生きるみなさんが災害を考える上での参考になれば幸いです。

                 【監修】名古屋大学減災連携研究センター
特任教授 武村雅之

【第2部】8月30日(水)~11月24日(金)

第2部チラシのダウンロードはこちらから

【展示風景】

【スペシャルギャラリートーク】(13:30~1時間弱)
講師:名古屋大学減災連携研究センター特任教授武村雅之
①7月15日(土)「地震の正体を探る-関東大震災と地震学-」(終了)
②9月16日(土)「震源直上で何が起こったか?-神奈川県の関東大震災-」(終了)
③2月3日(土)「関東大震災が造った東京-帝都復興事業とその後-」



第2回スペシャルギャラリートーク(9/16)でも多くの方にご参加いただきました。

※どなたでも、ご見学・ご参加いただけます。
※5名以上の団体は見学予約をお願いします。見学予約はこちらから。
※予約は3ヶ月前から受付けます。③の受付開始は11月1日です。
※諸事情により、日程、内容等が 変更になる場合がございます。ご了承ください。
※追加情報は、その都度HPに掲載しますので、ご確認ください。

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第143回げんさいカフェ(ハイブリッド)を開催、報告文を掲載しました

「流域治水2.0」って何?~高まる水害リスクに備える新たな取り組み

ゲスト:河川工学者 田代 喬 さん
(名古屋大学減災連携研究センター副センター長・ライフライン防災産学協同研究部門特任教授)
日時:2023月10月23日(月)18:00~19:30
場所:名古屋大学減災館1階減災ギャラリー・オンライン
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦 さん
(江戸川大学特任教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 げんさいカフェは、「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」との共催で実施しています。

  

このところ毎年のように大きな水害が起きています。それに対して国が最近「流域治水プロジェクト2.0」を始めるという方針を打ち出したんですが、これはいったいどんなものなんだろう?とうことで、河川工学の専門家である田代喬さんにゲストにおいでいただきました。

「なんとか2.0」という言葉は、これまでとはまったく違う新しい「バージョン」が始まるといった意味で使われることが多いですね。そこでその「2.0」についてしっかり理解するために、その前の1.0にあたる「流域治水」とはそもそも何か、というところからお話いただきました。
このところ毎年のように起きている豪雨災害の中でも、2018年の西日本豪雨と、2019年の台風19号=東日本台風の被害というのは、国や都道府県などの河川管理者にとって大きなショックだったということです。
というのも、西日本豪雨の時、倉敷市真備町では川の堤防が右岸と左岸の両方が決壊していたからです。これは従来の水害では考えられなかったこと、ふつうは右岸と左岸のどちらかの堤防が決壊すると、それによって川の水位が下がり反対側の堤防は持つはずなのです。ところが右岸左岸ともに決壊したということは、従来の治水の常識が通じなくなっていることと関係者は受け止めました。
さらに、その翌年の台風19号東日本台風の被害も関係者を驚かせました。この台風では東日本一帯で、国管理の河川の12箇所の堤防が決壊しました。これほど大きな河川が、同時多発的に12か所も氾濫するという出来事は、これまでなかったんだそうで、国や県など河川管理のプロからしてみると、従来の治水対策では、とても太刀打ちできない水害が起き始めている、フェーズが変わったと感じたということだそうです。
そこで登場したのが「流域治水」の考え方、文字通り、流域全体で治水をしようということです。
伝統的な治水対策の考え方は「とにかく、川から水があふれるようなことはあってはならない、だからダムや堤防の整備を」というものだったわけですが、そこから発想を転換して、これからは、これまでの対策では対応できないレベルの大雨が降る恐れがあることを認め、それが起きてもできるだけ被害を小さくする、そのために流域のすべての関係者が協同して対策にあたるという考え方、これが「流域治水」だそうです。

 

この、すべての関係者というのは、国などの河川管理者だけでなく、上流の集水域=つまり降った雨がその川に流れ込む地域で、山や森林や農地を管理する人たちとか、下流の氾濫域=つまり大雨の時には川の水があふれて流れ込むかもしれない地域の人たちも入ることになります。
そしてこれらの人たちが協同してというのは、例えば上流の人たちは、降った雨水が、なるべくゆっくりと川に流れ込むようにして、すぐに水位がピークにならないように、森を保全したり、遊水池をつくって途中に水がとどまるようにするとか取り組みます。
一方、下流の人たちは、川があふれるかもしれないということを前提に、被害を最小限にする対策、例えば、お年寄りの施設などを、リスクの高い地域からリスクの低い地域に移しておくとか、早めの住民避難のための情報伝達手段や避難路の確保をするなどです。民間企業では、浸水被害が起きることを前提に、その後にできるだけすぐに復旧できるような計画を立てておくなどとなるわけです。
3年ほど前に都市河川関係の法律が改正され、この流域治水の考え方がはっきり示されました。法律で指定された河川には、いろんな関係者による会議=流域水害対策協議会が作られ、一緒に計画を考えることになります。また法改正によって、上流では雨水を一時的に貯める施設に補助金が出るようになるとか、森林を伐採するような開発に規制ができるようになりました。そして下流の方では、高リスク地域からの移転や住民への早めの情報伝達のための補助が得られるようになりました。

 

いいことずくめのように思いますが、ではなぜいま「流域治水2.0」が出てきたかというと、どうも国から号令をかけただけでは、この流域治水の考え方が十分広がっているとは言えないからのようです。もともとすべての利害関係者が合意して流域治水が始まったわけではありませんからね。
確かに住民や市町村からすれば、河川管理者からいきなり「川があふれるかもしれないので対応よろしく」と言われても最初は戸惑うでしょう。従来からの河川整備はちゃんと計画通りにやってくれるのか?と疑問を持つのも当然です。
ですから今回、国が2.0を打ち出したのは、本気度をみせるという狙いがあるようだと田代さんはおっしゃいます。国は109河川を指定して、今年度中に実現すると意気込みを見せています。
そして2.0では、より現実的でシビアな被害想定をするというのが1.0との大きな違いだということです。1.0では過去の降雨データに基づいて治水の計画をして、気候変動はそれに追加要素として加味するという取り扱いだったのですが、2.0では、これからの気候変動で雨が増えるということを予め織り込んで治水計画を作ります。平均気温が2度上昇すると、降る雨の量は1.1倍、川の流量は1.2倍になると推計されていますので、それを被害想定にしっかり入れて、そのハザードマップも公表する。同時にみんなで流域治水に取り組めば被害をここまで減らせるということも公表して、協力を呼びかけるようになったのが大きな違いだということです。
田代さんが、すでに2.0に取り組んでいる高知県の仁淀川の例を紹介してくださいましたが、シビアな被害想定の公表と同時に、各市町村が雨水の排水ポンプを増やすとか田んぼダムを増やすとか、浸水センサーをたくさん設置してリアルタイムで浸水状況を住民に知らせるという被害軽減のための取り組みが始まっているそうです。
ただ、109河川のうち現時点では11河川しかまだ計画が始動していないということで、まだまだこれからですね。
でも皆さんも、住民として、流域治水の関係者の一人だということになります。お近くの川も、もうバージョン2.0になっているかもしれませんからもう一度、ハザードマップを確認したり、避難にも関心を持っていただければと思います。
今回のカフェには会場で16人、オンラインで190人にご参加いただきました。田代さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

 

→ポスター(PDF)

→過去のげんさいカフェの様子はこちら

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来館者が9万人を達成しました(2023/10/21)

2023年10月21日(土)、減災館の来館者が9万人を達成しました。 当日は、飛田センター長、武村特任教授他による記念セレモニーが行われ、9万人目及びその前後の方に、記念品が贈呈されました。

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第142回げんさいカフェ in ぼうさいこくたいを開催、報告文を掲載しました

若者に防災減災を届ける方法を考える

ゲスト:防災をHappyに伝える防災士 まこぴ さん
→まこぴさんのインスタグラムアカウントはこちら
日時:2023月9月17日(日)14:30~16:00
場所:横浜国立大学教育文化ホールB101中集会室・オンライン
〒240-8501 神奈川県横浜市保土ケ谷区常盤台79番1号
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦 さん
(江戸川大学特任教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)


今回のカフェは、防災関係のイベントなどに参加することが比較的少ない「若者」や「子育て世代のパパママ」たちにどうやって情報をお届けするか、神奈川県湘南地方で、「防災をHappyに伝える」ユニークな活動をされている防災士のまこぴさんにゲストに来ていただき、お話をいただきました。まこぴさん、サーフィン好きが高じて湘南に移り住んだという33歳の女性で、写真で見ていただける通り、金髪のおしゃれな方です。

期待通りの楽しいカフェになりました。
そもそもまこぴさんが防災に関心を持ったのは、お茶の水女子大に通っていた頃に東日本大震災が起き、教授にくっついて被災地支援に行ったことがきっかけだそうです。そこで行った岩手県陸前高田市が大好きになり、そのあとも通い続けて、ついに向こうにも家を借りて、いまでは湘南と陸前高田の2拠点生活をするようになったそうです。
本名は古島真子さんという方なのですが、みんなからまこぴさんという愛称で呼ばれているのでそのまま、まこぴと名乗って活動しているとのことです。
いまから3年ほど前に、防災士の資格をとり、その頃から防災を「ハッピー」に「カラフル」に伝える活動をやっていらっしゃいます。
「ハッピー」というのは、防災というと、とかく難しいという印象を持たれがちですが、楽しくイベントなどに参加しているうちに自然に必要な知識が身につくようなものにすることだそうです。
そして「カラフル」というのは、ひとの個性は十人十色であって、備えるべきことは人それぞれなので、それぞれに合わせて防災もカラフルであるべきということなのだそうです。
まこぴさんは、地域の人たちとともに、そういうハッピーでカラフルないろんなイベントやセミナーを開き、そして、それをきれいな写真や短い動画でインスタグラムを使って毎日発信するという、いまどきの方法で情報伝達をされてます。

 
そのまこぴさんに、私たちが若者に防災減災の情報を伝える方法を教えてとお願いしたのですが、のっけから、おじさんたちがSNSとかを使って若者に防災・減災を伝えようとしても、しょせんそういう小手先のテクニックでは無理、あきらめてくださいと言われてしまいました。(笑)元も子もないですね。
そこで出たまこぴさんの名言が“目には目を、歯には歯を、ギャルにはギャルを”という言葉。防災の世界ではペーペーで知識も少ない自分の唯一の強みは、「ギャルと防災を語れる」ということだとおっしゃいます。
で、実際にまこぴさんのイベントに参加してくれた人の写真を見ると、確かに20代後半とか30代くらいの、まこぴさん前後の世代のギャル達がたくさん参加していました。
まずは友達関係、そしてその友達の紹介、という形で広がっていき、中には、参加してくれたギャルが「うちのパパが幼稚園の先生やってるから、ちょっと幼稚園でセミナーをやってもらうように紹介するね」とか、そういうこともあったそうです。
そして、まこぴさんがおっしゃるには、若者を十把一絡げにして「若者は防災に関心がない」って決めつけるのはよくない。実はそうではなくて、災害怖いなと思っている人、なんかやんなきゃと薄々思っている人はたくさんいて、中には興味があって発信したいと思っている若者もいるんだというのです。でも防災を仕事にしても、あまりお金にならなそうとか、だんだん先細って結局、あきらめてしまったりしているんじゃないか。
だからおじさんたちの仕事は、そういうダイヤの原石みたいな若者を見つけ出して、サポートしバックアップすることなんです。そうすると、きっとその若い人から別の若い人に情報が伝わっていくはず、ということでした。

もうひとつ、まこぴさんは、「防災と楽しいことの掛け算」も大事だとおっしゃってました。やっぱり防災だけがテーマだと人は集まりづらい。だけど、何か他の楽しいことと掛け合わせたときに、新しく来てくれる人いるんだそうです。
その1つ実践例が「防災×アロマ」で、アロマセラピストのお友達とコラボして、手作りのアロマスプレー作りのイベントを開き、その場で防災リュックについてまこぴさんがミニ講座。そして作ったアロマスプレーを防災リュックに入れて「これでいざという時に香りで心の安らぎが得られるね」とやったそうです。アロマは若い女性に人気がありますから、たくさんの方が参加してくれたそうです。

 
もう一つが「防災×お酒」というアイデアで、今年の3月11日に茅ヶ崎の一番人気の居酒屋でイベントを開いたそうです。
その場に集まったサーフィン好きの人たちに、津波についてのミニ講義、実際に陸前高田ではこんなことが起こったんだよという話をまこびさんが伝えて、地震発生の時刻に黙祷、そしてその後、知り合いの陸前高田の漁師さんから届いた毛ガニとか、めかぶとか、ソウルフードのホルモンをみんなで食べるということをやったそうです。
すごい参加人数で盛り上がったそうですが、ただ盛り上がったっていうだけじゃなくて、なんで来てくれたのかっていうのを初めて会った人に聞いてみたら、実は311直後に陸前高田行ったことあるんだよと話してくれた人とか、津波が怖くて防災に興味はあったけど学ぶ機会がなくて、みたいなお話をしてくれた人がいたそうです。
おそらく、人気の居酒屋で開催しなければ、その方とまこぴさんの接点は一生なかったのでしょう。しかしお酒と素敵な居酒屋とのコラボのおかげで、実は興味があったっていう人たちとマッチングすることができたというわけです。

この「防災×お酒」っていうのは、私たちおじさんでもできそうだなと思いましたね。
でもやっぱりそこに若者や子育て世代にたくさん来てもらうためには、防災に関心をひそかに持っている若者やパパママを探さないと、その人たちが発信源になってくれないといけないな、とは思いました。
実はこのげんさいカフェは、いつもの減災館と違って、この日横浜国立大学でひらかれた内閣府のイベント「ぼうさいこくたい」の会場で開きましたが、その「ぼうさいこくたい」には、大学の防災サークルの若者とか、防災に関心がある看護学生なんかもたくさん参加していて、まこぴさんがおっしゃるように、防災に関心を持っている若者、確かにいるなと実感しました。
私たちは、そういう人材をいつも探している必要があるんだな、と思ったカフェでした。
今回も会場に31人、オンラインで89人の方が参加してくださいました。まこぴさん、参加者のみなさん、ありがとうございました。

 

 

→ポスター(PDF)

→過去のげんさいカフェの様子はこちら

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競争的資金・賞など

(専任教員・特任教員・寄附研究部門教員が研究代表者として受けたものに限る)
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第192回防災アカデミー(ハイブリッド)を開催しました

内容:知ってるつもりの緊急地震速報
講師:山田 真澄 さん(京都大学防災研究所准教授)
日時:2023年10月6日(金)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン

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