第217回防災アカデミーを開催しました(内容紹介掲載、講演動画を視聴できます)

内容:防災における科学・倫理の限界と、3助のガバナンスとしての地区防災計画制度の活用
講師:田中 隆文 さん(名古屋大学減災連携研究センター 客員教授)
日時:2026年4月17日(金)16:30〜18:00
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン


【講師からのメッセージ】
個別具体性と文脈依存性を無視できないケアの倫理に着目すると、抽象性と汎用性を重視する近代科学の限界が見えてくる。この対峙のアナロジーからは事前防災における自助・共助・公助の性格が明確となり、地区防災計画制度の卓越した特徴が見えてきた。

【内容紹介】
本日のアカデミーは,減災連携研究センター客員教授の田中隆文先生に,「防災における科学・倫理の限界と,3助のガバナンスとしての地区防災計画制度の活用」についてお話しいただきました.会場参加が42名,オンライン参加が157名であり,熱心に聴講する方が多く,会場も熱気に包まれていました.詳細は,YouTube動画を参照いただければと思います(し,以下は若干のネタバレが含まれます)が,得られた気づきと学びを共有したいと思います.
田中先生は,全体を通じて,「抽象性―個別具体性」の第一軸,「普遍性―文脈依存性」の第二軸で分けられる平面を構成する4つの象限による整理を基本に,科学と防災に対する概念的な分析からお話を展開されました.例えば,家庭サービスに関しては,家事,育児や介護など,個別具体で文脈依存な第一象限は,(女性や有色人種などの)弱者に押し付けられ長らく軽視されてきた一方,世帯主の収入による扶養といった抽象的で普遍的な第三象限は,(男性や白人などの)強者により優占され高い評価を受けてきた経緯があり,この際,抽象的でありながら文脈依存な第二象限は「冠婚葬祭」などの催事,個別具体的でありながら普遍的な第四象限は「行楽・レジャー」というように,日頃の家事を担っていない人が行う家庭サービスとして位置づけ,説明されていました.哲学的で概念的な話でもありましたが,象限図による整理は,(ここでは家庭サービスの)統治・管理とも称されるガバナンスの仕組みを「見える化(可視化)」する方法として有効と感じられました.
本題の「地区防災計画制度」を含む事前防災について象限図の整理を適用すると,文脈依存でありながら個別具体な「地区防災計画」(第一象限)と抽象的な「地域持ち回りの防災訓練」(第二象限),普遍性がありながら抽象的な「都道府県の地域防災計画」(第三象限)と位置付けられるようです.ただし,普遍的で個別具体な第四象限に対しては,「ハザードマップを各自で事前に確認し,公設避難所に限らず,各自で避難して欲しい」との(専門家の)コメントを紐づけられたうえで,「自己責任」が強調される防災の風潮に警鐘を鳴らされていました.これは日頃から防災だけでなく福祉も実践されておられる,田中先生ならではの視点・見解であり,先生が強調されたかった「ケアの倫理」を感じられた瞬間でもありました.そうした考察の後,地区防災計画制度のグッドプラクティスに関する紹介へと話題が展開されていきました.
昨今,地区防災計画制度は,全国各地で事例が蓄積されつつありますが,地域によってはまだまだ浸透していないように感じられます.田中先生のお話は,(防災リーダーを始めとする)地域で活躍されている方々に対し,本制度を活用することの意義やその有効性を紹介されるとともに,計画を策定するうえでの敷居を下げられたように思われます.なお,今回のお話を通じて採用されていた象限図を用いた整理は,(防災や福祉に限らず,)さまざまな社会の問題の構造を明らかにし,ガバナンスの改善を図っていくうえでも活用したい,そう思わせるような学びがありました.最後になりますが,多くの文献をレビューされご自身の体験・見解を踏まえて構成された,貴重なお話をしてくださった田中先生には,深甚の敬意・謝意を表したいと思います.
ご来場いただいた多くの皆さま,本年度のアカデミーもよろしくお願い申し上げます.
(田代 喬 記)

 

→ポスター(PDF)

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