内容:企業を守るは生活を守る -企業防災の普及に向けて-
講師:松下 哲明 さん(NTT西日本東海支店ビジネス営業部)
日時:2024年10月16日(水)16:30〜18:00
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン
【講師からのメッセージ】
企業の被害はサプライチェーンに影響及ぼすだけでなく、従業員の生活にも影響します。能登半島地震においても、事業の停止が人口流出につながることが指摘されました。企業の防災対策は自社の事業のみならず、地域住民の生活を守ることにつながります。講演者はBCPの普及には、BCPの効果を実証的に把握することが有効と考え、東日本大震災を事例として短期的及び長期的な影響度の違いを調査してきました。セミナーではこの結果を紹介するとともに、中小企業の防災対策を促進するための施策について紹介します。これらを通じて、企業防災のさらなる普及について考えたいと思います。
【内容紹介】
松下哲明先生(NTT西日本)は、防災工学、及び事業継続、都市防災、防災経済を研究分野、専門分野としており、企業での業務と併行して,災害が企業業績に及ぼす影響、BCP(事業継続計画)や復興支援策が回復に及ぼす影響・効果などの研究に取り組んでいます。また、特定非営利活動法人 事業継続推進機構の幹事を務めるなど、BCPの普及啓発、人材育成にも尽力されています。
当日は、企業の防災活動が地域や我々の生活に与える影響、BCPの効果と実態等について講演を頂きました。大災害が企業に及ぼした影響については、熊本地震、令和6年能登半島地震の実績により、企業が被災して事業が停止すると、当該企業での従業員の被災、減給や解雇、地域での消費の落ち込みに加え、人口流出・需要減少が進むこと、さらに人出不足が支援金の申請等への支障にもつながるなど連鎖的に影響が出て、地域の機能維持がますます困難になることを指摘されました。さらに、影響は被災地域にとどまらず、サプライチェーンを通じて全国に波及することも実例を挙げて示されました。また、東日本大震災の企業への影響を、短期的・長期的に分析した結果をご説明頂きました。この中で、BCP策定済みの企業では、短期的には早期の事業再開、長期的には売り上げの低下が少ないことを示されました。企業活動、サプライチェーン維持に向け、大企業は元より、BCP策定率が2割程度である中小企業の対応が重要であり、公的機関による支援制度についても紹介がありました。
総じて、防災に関わる指導者や研究者は、企業に対し実効性のある防災対策を促す必要性を強調されました。
質疑応答では、業務内容や仕組みが様々なサプライチェーン間で共通させるべき項目や事象、中小企業におけるBCPの普及がどのように進むか、等がありました。回答として、BCP未作成であった企業が、取引先からの要請等をきっかけにBCPを作成した事例など、最終的には地道な活動が必要であることが示されました。
当日は会場参加24名、オンライン参加108名、合計132名の方にご参加いただきました。
(小沢 裕治 記)