今回はいよいよ免震部材の取り付けです。
ここで、工事の説明に先立って少し免震システムと免震部材についての説明をしたいと思います。既に何度も出てきていますが、この建物は基礎免震構造の建築物です。免震というのは、建物の上部構造を地震動の水平力から絶縁しようとする構造です。
理想を言えば、上部構造が空中に浮いていれば完全に地震動とは絶縁されますが、それは困難なので建物が地面の上を滑るようにして、地震動により建物に入力される水平力を大きく減らすことを目標にしています。また、建物が元の位置に戻らずずっと移動していくのは不都合なので、建物を元に戻す必要があります。さらに、建物が揺れ続けない工夫や、小さな揺れでは動かないような工夫も必要です。
こうした機能を備えた免震構造の建物は盲目的に全て安全というわけではありませんが、うまく働けば地震の揺れを大幅に減らすことができ、大地震に対しても室内のゆれを小さなものにすることができます。
建築物の免震部材には、
水平に動きやすいこと、
元の位置に戻ること(復元力をもつこと)、
建物の荷重を支えること、
揺れ続けないように揺れを抑えること(減衰すること)、
などの機能が求められます。
減災館で用いられる免震部材は、天然ゴム系積層ゴム、直動転がり支承、オイルダンパーの3種類があります。天然ゴム系積層ゴムは、ゴムと鉄板を交互に薄く何層にも重ね合わせることによって、鉛直方向にはあまり変形せず、水平方向には変形しやすい特徴をもっています。先ほどの機能で言えば、水平に動きやすいこと、元の位置に戻ること、建物の荷重を支えることの機能が備わっています。今回設置された積層ゴムは、鉛直方向に比べて水平方向には約2000倍強程度変形しやすいものとなっています。
直動転がり支承は、ボールベアリングで荷重を支えることができ、地震時にはレールを転がることで水平に動きやすい特徴をもっています。また、オイルダンパーは建物の荷重は支えませんが、油の粘性を利用して揺れを抑える機能を有しています。
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さて、現場ではいよいよ先週打設していたマットスラブの上に免震部材の取り付けが行われました。昨日、予定通り1日で免震部材の設置が完了し、本日は擁壁の型枠を組むことと、免震部材の保護が行われていました。
昨日は免震層に取り付ける免震部材として、天然ゴム系積層ゴム5基と、直動ころがり支承(CLB)9基の搬入と取り付けが行われました。このほかに、この免震層には先ほども記したようにオイルダンパーも付く予定です。オイルダンパーをこの段階で取り付けていないのは、今後予定されている本建物の強制加振実験の影響です。オイルダンパーを取り付けてしまうと途中で建物をゆするのが困難になることを配慮して、まだ取り付けを行わないそうです。
免震部材はクレーンを用いてあらかじめ設置されたベースプレートの上に配置し、ボルトで取り付けていました。また、同じ免震部材でも大きさなどにいくつかの種類があります。これは、建物が3角形ということもあり、期待される荷重や、引き抜き力が設置
場所によって違うことなどを考慮して設計者が設計・指示されているそうで、監督さんと設計者の意思の疎通がとても大切だなと感じました。
どちらの部材も今後この上に打つコンクリートの打設で汚れないように、保護がされていました。工事完了して受け渡すときにきれいな状態で渡したいという心意気ですね。
明日は擁壁コンクリートの打設が行われるそうです。
【河村】