内容:防潮堤と市民活動
講師:三浦 友幸 さん(一般社団法人プロジェクトリアス代表理事)
日時:2025年3月19日(水)16:30〜18:00
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン
【講師からのメッセージ】
東日本大震災の復興事業として、東北三県の被災沿岸部に計画された防潮堤事業。行政主導で進む計画に対し賛否が割れ各浜では対立が起きつつあった。その中で気仙沼市民がとった市民活動や大谷地区を中心とする地域における合意形成のプロセスを伝える。
【内容紹介】
三浦友幸氏(一般社団法人プロジェクトリアス代表理事)は、東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市大谷地区を拠点に、防潮堤整備をめぐる住民参加型の合意形成やまちづくりに取り組まれてきました。今回の防災アカデミーでは「防潮堤と市民活動」と題し、気仙沼市大谷地区における防潮堤計画をめぐる住民との対話のプロセス、署名活動や勉強会の実施、若者のまちづくり参画、行政との粘り強い協議など、長年にわたる実践についてご講演いただきました。
講演では、震災後に当初計画された防潮堤が地域の象徴であった砂浜を埋めるものであったことから、地域住民が自ら「防潮堤を勉強する会」を立ち上げ、中立的に情報を共有しながら計画の見直しを求めていった経緯を詳しく紹介いただきました。中でも、若者が中心となって地域内の勉強会を開催し、住民意見を整理・提案し、地域全体で「安全な防災」と「砂浜の再生」の両立を目指したまちづくりへとつなげていったプロセスが印象的でした。
防潮堤整備をめぐっては、防災性・景観・環境・住民文化の尊重といった多くの価値が交錯し、合意形成が難航しがちですが、大谷地区では「共感・信頼・対話」をキーワードに、住民と行政が対等な立場で議論を重ねることにより、最終的には住民案が行政計画に反映され、震災前の砂浜を復元した防潮堤整備が実現されました。
講演の最後では、「災害からの復興とは何か」「地域の正義とは何か」といった根源的な問いに触れながら、今後の地域防災の在り方や、合意形成における多様な視点の重要性についてもご教示いただきました。
質疑応答では、防潮堤における合意形成の方法や、住民の対話の場づくり、行政と住民の関係性の変化などについて活発な意見交換がなされました。制度が変わらぬ中でもプロセスを丁寧に積み重ねることで道が拓かれていく過程は、全国各地で今後展開されるまちづくりにも学びを与えるものであり、大変貴重な講演となりました。
会場、オンラインを併せて137名の方が参加くださいました。
(羽田野 拓己 記)
※講演動画
https://www.youtube.com/watch?v=sU6HaRunRRo →YouTube 講演動画