第52回げんさいカフェを開催しました

「地震の揺れを予測する方法」

ゲスト:地震学者 平井 敬さん
(名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻助教
減災連携研究センター兼任)

日時:2015年9月2日(水)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館 減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦(名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。

 

 今回のゲストは地震学者の平井敬さん。学部時代は地震とは無縁の「化学工学」を専攻していたそうで、会場の参加者から地震研究を始めたきっかけを聞かれ「それまでナノ(百万分の1ミリ)レベルの研究をしていたので、目に見えるものを研究したかったから」と答えていました。

 さて、私たち一般市民は、地面が揺れることを「地震」と呼びますが、研究者たちは違います。「地震」は“地下で断層がずれ動く現象”そのものを指し、“その結果として地面が揺れること”は「地震動」と呼んで区別しています。

 平井さんの研究テーマは、将来起きる地震で、どこがどのような地震動に見舞われるかを予測する方法の開発。やっていることは「地震動予測」であって、将来どのあたりにどのくらいの地震が起きるのかを考える「地震予測」とも、いつ頃どこでどのような地震がおきるのかを当てる「地震予知」とも違いますと強調しておられました。

 カフェでは、地震動予測の具体的なやり方について紹介していただきました。大まかに分けて簡便法と詳細法があるということです。

 簡便法は「震源からの距離が離れれば離れるほど地震の揺れの強さ(最大加速度、最大速度、スペクトルなど)が減少していく」性質を利用して、過去のたくさんの地震観測結果をもとに作った計算式で、その場所に到達する地震動の強さを予測する方法です。これに、その場所の表層地盤の影響で揺れが増幅される度合いを重ね合わせると、実際に地表面で感じる「揺れの強さ」が予測できます。

 一方、詳細法は、震源断層にどのようなずれが生じるか(震源特性)と、その揺れがどのように伝わっていくか(伝播特性)、それに揺れを増幅する軟らかい地盤か増幅しない固い地盤か(地盤特性)の3要素について、それぞれさまざまな仮定をおいて、実際にコンピュータで計算して地震の波形まで予測するという方法です。

 詳細法のほうが、地震の波形そのものが得られるため、そのあとの詳しい検討がしやすくていいのですが、計算量が膨大になる上に、計算するまでにさまざまな仮定を置くので、そのどこかが現実と食い違うと結果が大幅に違ってしまうという難点もあります。一方、簡便法は、過去に起きた地震の平均像を使って予測するため、予測結果が大きく現実と食い違うことがない一方で、想定する地震や揺れを予測する地点の特有の条件を反映することが難しいという難点もあり、用途にあわせて使い分ける必要があるようです。

 詳細法の計算を簡略化するために、想定する地震の震源域付近で起きた小さな地震による地震動の観測記録をたくさん重ね合わせて地震動波形をつくる「経験的グリーン関数法」という手法も注目されているとか。地震動予測は日進月歩のなかなか面白い分野ですね。

 このような予測結果は、国や各自治体が出す地震ハザードマップ等に反映されています。平井さんは「ハザードマップの各地の震度=赤やオレンジや緑がどのように計算されているか、思いをはせてみてください」と参加した市民の皆さんに呼びかけていました。

 今回も会場からたくさんの質問が出て、もりあがりました。平井さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

 
→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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