内容:地震の揺れと建物被害
講師:宮腰 淳一 さん(清水建設株式会社技術研究所安心安全技術センター主席研究員/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)
日時:2025年1月15日(水)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン
【講師からのメッセージ】
地震によって地面は細かく揺れたり、ゆっくり揺れたり、様々な揺れ方をします。建物も木造や鉄筋コンクリート造、低層から高層まで様々です。また、地震による地面の揺れと建物の被害は密接に関係しています。建物の被害の軽減には、両者および両者との関係をきちんと理解しておく必要があります。本講演では、それらについて解説したいと思います。
【内容紹介】
宮腰淳一先生(清水建設株式会社 技術研究所安全安心技術センターの主席研究員、名古屋大学減災連携研究センター客員教授)は、地震工学、耐震工学、地震防災を研究分野とされておられます。1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災以降、文部科学省内に設置された地震調査研究推進本部では、地震の揺れを予測する研究が課題の一つとして掲げられ、この分野の研究が進展しました。また、この震災を契機として各地の地震の揺れの大きさと建物被害との関係についての研究も進みました。宮腰先生は、例えば、確率論的地震動予測地図の作成等、地震調査研究推進本部の活動に関わられていたり、博士論文として取りまとめられた、阪神淡路大震災における建物被害調査結果に基づく地震の揺れの大きさと建物被害との関係についてのご研究成果は、国や自治体が実施する被害想定にも役立てられています。加えて、超高層建物や免震建物の設計に用いられる地震動の作成にも貢献されています。今回の防災アカデミーでは「地震の揺れと建物被害」と題して、これまでのご研究成果についてご講演いただきました。
被害想定では、地震の揺れの大きさと建物の被災程度の関係を明らかにしておく必要があります。ただし、地震の揺れの大きさ、あるいは建物の被災程度を表す指標は多様です。本講演では、様々な指標とそれらの意味や経緯等について、地震の揺れの大きさ、建物の被災程度のそれぞれについて、順に詳細にご紹介いただき、次に両者を合わせることで作成できる地震の揺れの大きさと建物の被災程度の関係式(被害率曲線)の意味やその作成方法、現状、さらには活用事例についてご紹介いただきました。最後に、このような方法で算定される建物被害想定結果を私たちはどのように受けとめるべきかについてご教示いただきました。
質疑応答では、被害率曲線の形状の意味、地域や建物種別ごとの被災予測の可能性などについてのご質問がありました。あまり詳しく語られる機会がない被害予測方法の背景や詳細、課題等を学ぶ貴重な機会となりました。
会場、オンラインを併せて205名の方が参加くださいました。
(護 雅史 記)