内容:強震動の観測と予測
講師:三宅 弘恵 さん(東京大学大学院情報学環・総合防災情報研究センター教授)
日時:2026年6月9日(火)16:30〜18:00
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン
【講師からのメッセージ】
名古屋と東京は約350km程度離れていますが,強震動について,少しつながりがあります.1891年濃尾地震の長周期地震動が東京のEwing(ユーイング)地震計で観測されていたり,1967年から名駅ビルで建物強震観測をさせていただいていたり,共に地震による被害想定を事前に行っていますが,震度6以上の揺れをこの100年程度は観測していない,などです.本日は,強震動の観測と予測について,現状と課題を含めてお話します.
【内容紹介】
本日の防災アカデミーでは、東京大学大学院情報学環教授の三宅弘恵先生に「強震動の観測と予測」についてお話しいただきました。三宅先生は、大学院から強震動の予測手法について研究されてきたこの分野の第一人者であり、開発された強震動予測手法は標準的な方法として広く利用されています。
講演は、気象庁の震度データベースで各都道府県が過去100年間に経験した震度を眺めることから始まりました。過去に震度7が記録されたのは6道県で起きた7つの地震のみで、震度6強が記録された全体の三分の一程度に過ぎません。地震が多い国日本でも本当に強い揺れを経験することは稀で、そのことで地震に対する備えが難しいことが分かります。
続いて過去の被害地震を振り返りました。1891年の濃尾地震では名古屋が大きな被害を受けましたが、その時の地震の波形記録が東京大学で取られていたこと、翌日の新聞には各地の被害や地震波形記録まで掲載されていたことが紹介されました。1995年兵庫県南部地震では主要な地震動がわずか10秒程度で、強烈な強震動のパルスが大被害をもたらしました。一方、2004年紀伊半島南東沖地震では、周期が5秒を超えるゆっくりとした揺れが長時間続く長周期地震動が各地で観測されました。東京大学は1960年代から現在まで名鉄ビルで地震観測を続けているそうで、2011年の東日本大震災の際に取られた貴重な波形記録をご紹介いただきました。
講演の後半は強震動予測のお話です。様々な観測例で示された通り、地震動の予測では、短周期の強い揺れから長周期の揺れまで幅広い周波数帯域の揺れを評価する必要があります。最近の大地震では、ゆっくりした揺れが先に来る場合や速い揺れが来る場合の両方が観測されており、長周期と短周期の震源が分かれている場合と重なっている例が報告されるなど、様々な観測データを統一的に説明できるような震源の性質は明らかになっていないそうです。そのため、強震動予測においては、様々なケースを想定して他数の計算を行い、起こり得る揺れの強さを確率分布として求められています。
最後は将来へ向けた課題についてのお話でした。多くの強震動観測は地表または地震基盤と呼ばれる地下深くのいずれかで行われてきましたが、建物に対する影響を正しく評価するためには、工学的基盤と呼ばれる建物の基礎上での揺れの評価が必要で、そこでの観測記録が殆ど無いとのこと、現状では観測データがまだまだ不足しているようです。観測の知見や予測精度に限界がある一方で、強震動予測に対する社会の期待に応えるために様々な検討が行われています。地震動の評価を建物の設計にどう反映していくか、原子力等の重要構造物におけるリスクの見落としをどう防ぐか、地震の揺れに対するリスクを社会にどう伝えていくかなど、科学的知見を社会で活用していくための課題がたくさんあることを再認識する貴重な機会となりました。
本日は、会場参加45名、オンライン175名、合計220名の参加がありました。
(鷺谷 威 記)







