内容:道路交通インフラの地震による被災の影響について
-令和6年能登半島地震災害から学ぶこと-
講師:庄司 学 さん(筑波大学システム情報系教授)
日時:2024年9月3日(火)16:30〜18:00
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン
【講師からのメッセージ】
能登半島地震により,道路交通インフラの被災に伴う甚大な交通支障が発生した.国道249号線などの通行障害は,救命・救助活動や応急復旧活動などに対して大きな影響を及ぼした.道路交通インフラの地震による被災メカニズムと災害対応への影響との関係を考察し,インフラ・レジリエンスの今後のあり方について提言する.
【内容紹介】
庄司学先生(筑波大学)は,土木工学,構造工学,地震工学,社会システム工学,自然災害科学を研究分野としており,ライフラインに高度に依存する現代都市において,交通インフラ,水処理システム,エネルギー供給,通信システムの地震・津波被害の軽減に関する研究に取り組んでいます。国土交通省に設置された上下水道地震対策検討委員会委員を務められるなど,2024年能登半島地震での道路やライフラインの被害や対策について検討されており,今回の防災アカデミーでは,能登半島地震の現地調査結果等を踏まえ,道路交通インフラの被災の影響について講演いただきました。
能登半島地震での道路交通インフラの物理的被害の特徴について述べられ,強震動,液状化等地盤変状等の複合的な荷重が道路交通インフラに作用することにより,物理的な被害から機能的被害へ波及し,複合災害となることを示しました。また,2024年能登半島地震での先遣調査,インフラ・ライフライン調査について,多くの現場の写真とともに紹介していただき,都市間,地域間の道路交通インフラとして,交通フローの限界,大型緊急車両が通行不能,渋滞や片側通行による到達時間の遅延,域外からの救援活動,応急復旧への支障があったこと,都市内,地域内の道路交通インフラとして,避難路としての機能不全,緊急車両進入,走行の不能・支障,救命・救助・消防活動への支障が生じていたことを示しました。
また,道路交通インフラの復旧プロセスについて時系列で紹介していただき,生活道路の耐震化が不可欠であること,緊急交通路・輸送路の機能不全を想定し,道路網としての脆弱性評価をより具体的に実施し,道路交通インフラのレジリエンスの想定が不可欠であることを指摘されました。
質疑応答では,道路のみならず,海上輸送などを災害時に活用することはできないか,生活道路の亀裂をどう考えればよいのか,能登半島のような高齢化,過疎化地域や今後の人口減少社会において,100%の機能回復を前提としたインフラレジリエンスの限界をどのように考えるのか,等があり,これからの道路をはじめとするインフラの防災減災を考える機会となりました。
15名が会場から,178名がオンラインから参加しました。(合計193名)
(平山 修久 記)