内容:災害文化とは何か?-在来知/伝統知の創造と継承
講師:祖田 亮次 さん(大阪公立大学文学部・文学研究科教授)
日時:2024年6月25日(火)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館1階減災ホール・オンライン
【講師からのメッセージ】
災害文化という言葉をご存じでしょうか。一般には「災害常襲地のコミュニティに見出される文化的な防災策」とされますが、最近はさらに広い意味で使われるようになっています。今回は災害文化の一端を紹介し、それがどのような意味を持つものなのかを考えてみましょう。
【内容紹介】
祖田先生は人文地理学がご専門で、東南アジア地域研究を進められ、ボルネオ島をはじめとする東南アジア各国で、土地や資源の利用や管理をめぐるポリティクス、少数民族の営み、日本およびアジアにおける河川流域学を研究され、その豊富な経験と俯瞰的な地理学的視点から、災害文化論をわかりやすくお話しいただきました。
冒頭に示された、大洪水に見舞われた町で泳いで遊ぶ東南アジアの人々の写真は、災害をめぐる文化的背景の違いを感じさせました。「災害文化」とはなにか、その一般的定義を整理した上で、ハード対策が進んで災害頻度が下がると災害文化が継承されないといったジレンマも紹介されました。災害を「厳父」、恵みを「慈母」に例えた寺田寅彦の「厳父の厳と慈母の慈との配合よろしきを得た国がらにのみ人間の最高文化が発達する見込みがある」という言葉も紹介され、災害文化を「人間と自然との緊張関係の中から築き上げられる文化」と広く定義されました。
さらになぜ被災するかという災因論においては、天罰という発想が東南アジアでは根強く、日本においても祈祷や信仰、神話や伝説にも関連性があることを指摘されました。
講演後の聴衆との意見交換では、科学に依存しすぎることが文化を醸成しない現代社会の問題ではないかとか、単に防災行動を定着させるために役立つ災害文化に限らず、様々な文化的な展開が目指されるべきではないか、などのやりとりがありました。日頃あまり考える機会のない、災害文化の重要性を考える貴重なひとときとなりました。
34名が会場参加、157名がオンライン参加しました。(合計191名)
(鈴木 康弘 記)