第36回げんさいカフェを開催しました

「”南海トラフ巨大地震”はどこまで分かってるのか?」

地震学者 金田 義行 さん
名古屋大学減災連携研究センター特任教授

企画・ファシリテータ:隈本邦彦
  (名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との
共催で実施しています。


今回のゲストは、この4月に海洋開発研究機構(JAMSTEC)から減災連携研究センターに移って来られた金田義行さん。現在、全国の大学や研究機関が取り組んでいる「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」のプロジェクトリーダーです。
この問題についての日本の研究のトップに、直接お話が聞ける貴重なチャンス、ということで、げんさいカフェがトップ研究者にストレートにぶつけた質問は、「南海トラフ巨大地震はどこまでわかっているのか」でした。
金田さんは、最新の研究成果をもとに、ここまではわかっているが、まだここから先はわかっていないというポイントを丁寧に説明してくださいました。

まずは、南海トラフそのものはどこまで調べられているのか。
医療におけるCTスキャンやMRI、そして内視鏡のように地下の構造を知るさまざまな観測手法を使い、フィリピン海プレートと呼ばれる岩板が日本列島の下にどのようにもぐりこんでトラフ(海底の溝)を作っているのかについては、かなり明らかになってきているということです。その観測結果を画像化した図や動画をいろいろと見せていただきました。プレート境界には、過去の地震の時に滑ったとみられる熱が発生した跡も見つかっているそうです。
そして医療における聴診器のような存在がDONET(ドゥーネット)です。精密な地震計と水圧計を、南海トラフ付近の海底に設置。小さな地震や地殻のわずかな変動を観測しつづけています。(金田さんのパソコンにリアルタイムで送られてくるDONETのデータがカフェの休憩時間に披露され、会場の皆さんもびっくりしていました)
これと四国沖に展開中のDONET2を使えば、南海トラフ巨大地震をいち早くとらえ、的確な津波予測も可能になるということで、研究だけでなく防災にも直接役立つのだそうです。

では南海トラフ巨大地震の何がわかっていないのか。課題はいろいろありますが、最大の問題は次に起きる地震がどんなものかがわからないことです。南海トラフでは過去に繰り返し巨大地震が起きていることははっきりしていますが、その地震は実に多様です。駿河湾から四国沖までの震源域が一緒に連動した宝永地震タイプもあれば、東南海地震と南海地震が2年の間をおいて起きた昭和のタイプも。また、揺れの記録はあまり残っていないのに津波だけが大きかったとされる慶長地震タイプなどもあります。次の地震がどのタイプかは、いまの科学では予測できません。最近の学説では、慶長地震だけは南海トラフではなく遠くの別の場所で起きたという考え方もあり、ますます予測は困難です。

金田さんが強調したのは、どんな地震が起きるかわからないにしても、地震への備えは絶対に必要だということ。特に東海地方では、強い揺れへの対策だけでなく、津波対策、液状化対策、ゼロメートル地帯対策、それに地下街、帰宅困難など大都市特有の問題にも備えの必要性が叫ばれています。そしてそれを実現するための防災教育、防災人材の養成が急務だと、金田さんはおっしゃいます。そのために科学者と社会が協力するしくみづくりが大切で、減災連携研究センターもその理念に基づいて活動しています。

 今回は90人を超える方が参加してくださり、会場の減災ギャラリーはいっぱいになりました。そしてDONETのデータは誰でも見られるのか、地震の発生予測にどのように生かされるのかなど、いろんな質問が出て活発な対話が行われました。金田さん、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。

日時:2014年5月7日(水)18:00〜19:30
名古屋大学減災館 減災ギャラリー

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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