減災センタースタッフブログ:免震住宅による減災の研究(一条工務店 高橋さん)

はじめまして。受託研究員の高橋武宏と申します。私は住宅メーカーで新商品の技術開発に携わっておりますが、ご縁がありまして減災連携研究センターでお世話になっております。

突然ですが、「地震のない世界」って想像できますか?

ヒントとして、ヨーロッパの街を歩かれた事のある方は、日本の建物との違いを感じませんでしたでしょうか?私がヨーロッパ旅行へ行った時は、数々の歴史的な組積造や大きく綺麗なステンドグラス窓の建物に感銘を受け、それと同時に近代建物の開放的な大空間や、柱がとても細いことに驚きました。かたや日本の建物は、太くてがっちりした柱を持ち、壁が多くなんだか窮屈な空間であることを、改めて感じました。

この差は日本とヨーロッパの気候風土の違い、建築文化の違いの表れでもありますが、そこには「地震」があるかないかも大きく影響しています。

ヨーロッパでも地震が無いわけではありませんが、日本ではヨーロッパの人が信じられないような頻度で大地震が発生しています。1995年から2014年現在までの約20年間に、日本では震度6弱以上の大地震が、なんと40回も発生しているのです。平均すると半年に1回のペースで、日本のどこかで震度6弱以上の大地震が発生している計算になります。このような地震大国に安全に暮らすには、当たり前ですが、とにかく地震に強い建物を作らなくてはなりません。

では「地震に強い」とはどういうことなのでしょう。

真っ先に思いつくのは、大きな地震の力に耐えることですね。大相撲の「がっぷり四つ」の状態を想像してみてください。相手(地震)より自分(建物)が強ければ倒されません。地震にガッツリと耐えるから「耐震構造」と呼ばれます。一方で小兵力士の場合は「いなし」、「肩すかし」といった妙技を繰り出し、巨漢を倒して土俵を湧かせます。このような考えに近い「地震への強さ」が「免震構造」といえます。

具体的には上の図が免震のイメージです。地震の揺れを免れるから「免震」と呼ばれるのですが、「柳に風のような技術」なんて表現も本質をついているのではないでしょうか。日本ではこの技術を利用した建物が増えており、研究開発の末、戸建住宅にも広がってきています。

そこで最初のお話に戻ります。地震の揺れを免れることができれば「地震のない世界」に近づけるはずです。そうなれば、大地震でも建物や室内、設備類に被害は生じないし、もっと自由で美しく、大きな間取りが実現できるはずです。完璧な免震技術が普及すれば、都市全体の減災に繋がるのではないでしょうか。地震大国日本にとって、まさに理想の住宅かも?

でも、私たち技術者にとって思い上がりは禁物。2011年の東北地方太平洋沖地震では、免震住宅の良いところと悪いところが明確に表れ、もっともっと深く研究し、免震システムを改良していかなければならないことを思い知りました。

いま、私は免震住宅の振動実験を繰り返し、先生方や学生さんと議論させて戴きながら、この大きな目標に向かって走っています。愛知県には既にたくさんの免震住宅が建っていますので、非常にやりがいのある減災プロジェクトだと思っています。

長文にお付き合いありがとうございます。これで私のお話は終わりです。

最後にもしかすると、、、上司と部下、友人同士、夫婦関係にも実は「免震」が必要なのではないでしょうか。いつも真っ向からがっぷり四つで耐えることも重要。でも、たまには柳に風で力を免れてみる。そんな人間関係も必要だなあと思うようになった今日この頃です。皆さまはどう思われますか?

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