研究領域

田中隆文の研究紹介

(1)土砂災害に備える地区防災計画研究

 災害対策基本法に定められた地区防災計画制度は,市町村域に対応する“地域”という大きさのレベルでは見過ごしがちな“地区”というレベルの特徴や災害脆弱性を反映させることができ,また行政組織からのトップダウンを前提としたシステムでは気づかず拾えないローカルノレッジに基づく経験や知恵を活用することが可能となる。特に土砂災害の場合は,再起期間が長いため世代を超えた息の長い対応が必要であるばかりでなく,局地的な地勢条件の影響が大きいため個々の現場ごとのきめ細かな警戒避難体制の構築が急務である。このような事情を踏まえ,砂防に適した地区防災計画制度の適用のあり方を探る研究を進めている。
http://sabo-cdmp.jpn.org/wp/

(2)郷土館・地域博物館における災害展示

 近年,災害そのものや災害の経験を展示し後世に伝える取り組みが盛んとなってきた。常設展の展示内容からは災害と無縁と思われた地域博物館や郷土館においても,災害をテーマとした企画展示が多く実施されている。“未曽有”や“想定外”というセンセーショナルな扱いではなく,科学技術だけでは対応できない問題をどう捉えてどう伝えるべきかという議論は尽くされていない。そこで,全国の様々な災害関連の企画展示を調査しグッドプラクティスを指摘するとともに,実効性のある防災・減災の啓発に繋がる災害展示のあり方を探求している。

写真1.「土砂災害防止『全国の集い』」(2017年 国交省・愛知県主催)では各地の災害展示の図録を並べられた。

(3)すべてを背負う「知の野生化」による
   「想定外を生まない防災科学」に向けた研究

 科学は,様々な要因が関与する自然現象を,精緻化し飼い慣らそうとしてきたのだろうか? 机上の実験科学と違って前提条件の諸条件を実験者が自由に設定できない野外科学(防災科学もその一つである)では,科学的事実は決して一つではなく汎用的でもない。そもそも多くの条件が天頼みの野外科学では,実験計画法で必要とされるような「条件を揃えた繰り返し測定」自体が到底実現するはずもなく,100ヶ所の現場を測れば100通りの異なるケースを抱え込むことになってしまう。防災科学では,典型例による説明から脱却し,単純化しない,要因を減らさない,条件を理想化しない,少数の基礎式に帰結させないという工夫が必要となる。知を無理に精緻化するのではなく「知の野生化」という観点から「想定外を生まない防災科学」に向けた研究を進めている。
http://www.kokon.co.jp/book/b208729.html

個人HP:http://sabo-cdmp.jpn.org/wp/
研究連携セミナー:第1回研究連携セミナー (2019年11月13日)
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