「次の震災について本当のことを話してみよう。」
ゲスト:地震工学者 福和 伸夫さん
(名古屋大学減災連携研究センター長・教授)
日時:2018年1月15日(月)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館1階減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦
(江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)
今回のカフェは、話題の本「次の震災について、本当のことを話してみよう。」の著者・福和さんに、思いっきり「本当の話」をしてもらおうという趣向です。
90人を超える参加者の皆さんが集まってくださいました。
福和さんは、本の中でも強調されていますが、国民の半数が被災者になる恐れがある次の南海トラフ巨大地震は、決して「来るかもしれない」ものではなく、「必ず来る」ものなのです。
それはカフェの冒頭で示された福和さん独特の「年表」を見るとはっきりわかります。
今年は、宇宙誕生から137億年、地球誕生から45.6億年、日本列島で起きた最後の破局的噴火(鬼界カルデラができた時の噴火)から7300年なのだそうです(笑)。そんな大きな時代スケールから見れば、この地で100年から150年に一度、繰り返し起きてきた南海トラフ巨大地震なんて、確かに「もうすぐ」「必ず来る」と思うべきものなんですね。
必ず来るんですから、絶対に備えなければいけないんですが、私たちはついついそれを後回しにしがちです。この本の出版にあたって、福和さんが出版社の社長さんに会社内の家具止めを約束させたというエピソードも載っています。
さて、この本は最初から最後まで、「人は見たくないものは見えない。見たいものだけが見える」というカエサルの言葉に象徴される「災害への備えの盲点」を指摘しています。
私たちには、次の巨大地震でおそらく起きると考えられるけれども、あまりに破局的な結果になりそうなことや、自分たちに都合が悪そうなことは、あえて考えないことにするという、良くない傾向があります。
典型的な問題点の一つとして福和さんがこの日のカフェで取り上げたのは、各企業が進めている災害後のBCP(事業継続計画)でした。
実は、①発電所は水と燃料がないと発電できないのですが、②工業用水も電気と燃料がないと作れないのです。それなのに③石油タンクもタンカーが着く港湾も、海辺の地盤の悪いところに作られています。しかも④それぞれの間をつなぐ道路やトラック・タンクローリーなど物流をどう確保するかしっかり計画されていません。つまり、いざ巨大地震が起きると、この①②③④が互いに絡み合って、結局どれもうまくいかないといったことが起きる恐れが高いのです。
つまり、それぞれの企業で「地震が来ても大丈夫」という立派なBCP計画が立てられていたとしても、その多くは他の企業や周辺の道路が無事という前提で作られているので、本番の時にはまったくその通りにならないということも十分ありうるのです。
それに対して、福和さんたちは、愛知県内の企業の人たちがそれぞれの弱点を包み隠さず話し合う「ホンネの会」を開くことで、解決しようと取り組んでいるそうです。都合の悪いことも正直に話し合って、災害時の民間企業のレジリエンス(強靭さ)を強めることを目指した地道な活動です。
こうした取り組みは、次の巨大地震で、愛知の工業生産がストップしたら、復興どころか国全体が立ちいかなくなるだろうという、多くの人が「見たくないものを」をしっかり「見た」結果、生まれた動きなんですね。そうした一人一人、一社一社の地味な「備え」が、次の巨大地震の被害を少しずつ減少させ、まさに「減災」につながるのだということを、福和さんの本は教えてくれています。
福和先生、参加者の皆さん、ありがとうございました。