第20回げんさいカフェを開催しました

「大規模災害時の電力需給を考える」

建築構造学者 都築 充雄さん
名古屋大学減災連携研究センターエネルギー防災寄附研究部門准教授

今回のテーマは、大災害時の電力供給をどう確保するかです。建築学者で、発電所の耐震設計などを手掛けてきた減災連携研究センターの都築さんがゲストでした。

都築さんは、まず地域に電力が供給されるしくみについてお話され、東日本大震災でこの電力網にどのような被害があったのか、現地の写真やデータ等を使って説明されました。津波で大被害を受けた地域や原発事故で立ち入り禁止になった地域を除くと、概ね1週間程度で各地の停電は解消したとのこと。各発電所の被害をみると、地震の揺れで被害を受けた発電所は早めに復旧できたのに対し、やはり、あわせて津波被害を受けた発電所の復旧は、かなり遅れる傾向があったということでした。

さて気になるのが、懸念されている「南海トラフ巨大地震」が、この地域の電力供給にどのような被害をもたらすか、ということです。都築さんは、「過去最大級」の連動地震を想定した場合、これまで電力会社が進めてきた地震・津波・高潮対策によって、おそらく伊勢湾内の主な発電所は甚大な被害を受けずに済むだろうと考えています。また、去年から運転を開始している日本海側の新潟県上越市にある発電所が、地震による太平洋側の被害が大きかった時には威力を発揮してくれそうな気がします。南海トラフ巨大地震で津波の被害がないと考えられる日本海側にも自前の発電所を作っておくという事前の対策は効果的です。一方、各地の変電所や、電柱や電線などの配電設備は、ある程度の被害は避けられないと予想されるため、経路を二重化して冗長性を持たせたり、早期の復旧をはかるための人員設備を用意しておくなどの対策で対応する計画だそうです。

去年夏に内閣府から公表された南海トラフ巨大地震の想定は、“想定外”が批判された東日本大震災の例を教訓として、「科学的に考えうる最大級の地震や津波」を想定していることから、2003年に中央防災会議が出した「過去最大級」の連動地震の想定より巨大で強い地震となっています。このため、各発電所で想定すべき揺れの強さは2倍から3倍となっているとのこと。実際それにどこまでどう備えるのか、かかる費用やその他の要素と慎重に勘案することが必要で、その点の合意のためにぜひ皆さん自身で考えてほしいと、都築さんは話していました。

会場からは、電線の地中化やスマートグリッド網の整備などが災害対策としてどのような効果をもたらすかや、津波に対して発電所のオイルタンクが大丈夫か、などたくさんの質問が出て、今回も対話が盛り上がりました。都築さん、ありがとうございました。

日時:2013年1月29日(火)18:00〜19:30
名古屋大学カフェフロンテ(環境総合館斜め前、本屋フロンテの2階。ダイニングフォレスト向かい)

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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