第56回げんさいカフェを開催しました

「南海トラフ巨大地震発生で電気はどうなる?」

ゲスト:建築構造学者 都築 充雄さん
(名古屋大学減災連携研究センターエネルギー防災寄附研究部門准教授)

日時:2016年1月6日(水)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館 減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦(名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。

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 “大地震の後に停電が起きる”のは当たり前のように思いますが、発電所の耐震設計などを手掛けてきた専門家、都築さんによると、地震で停電が起きるシナリオには主に3つがあるそうです。

 1つめは、地震や津波で電柱が倒れたり変電設備が壊れたりしたための停電。配電網の被害による停電です。これは我々素人もイメージしやすいですね。
 しかし東日本大震災直後に東北地方で広域に起きた停電はそれとは違う2つめのシナリオによるものだったそうです。それは需要と供給のバランスが崩れて起きる停電。電気は普段から、発電所が供給する電力と利用者が使う電力需要がバランスするように運用されています。真夏の昼過ぎと、春秋の深夜では2.5倍以上も違う電力需要の変動を、常に発電所を動かしたり止めたりしながらバランスさせているわけです。ところが一定以上の地震の揺れを観測すると、発電所はいったん停止して設備に異常がないか点検し、その後発電を再開するルールになっているため、広域に大地震が起きると必ずといっていいほどその地域に一時的な発電量不足が発生、需給のバランスが崩れて停電します。東日本大震災では、宮城、岩手、秋田、青森の4県でこの理由による広域の停電が起きたそうです。
そして3つめのシナリオが、発電所(発電設備)そのものが被害を受けて起きる電力不足です。前の2つのシナリオ(配電網の被害や需給バランスの崩れ)による停電は、数日から2週間程度で復旧することが多いのですが、3つめのシナリオ(発電設備の被害)による電力不足は、完全復旧までに数か月から1年と長い期間がかかることが多いそうです。もともと発電設備は、高い耐震性を持たせて設計されているため、なかなか壊れないけれども、いったん壊れたら大変、というわけです。

 将来起きるとされている南海トラフ巨大地震でもこの地方に停電が起きることが懸念されています。当然、3つ目のシナリオ(発電設備の被害)もある程度覚悟しなければなりません。場合によっては数か月にわたってかなりの発電量不足が起きることが予想されます。

 中部電力では去年、約1,000億円をかけて発電所の耐震性向上などの第3のシナリオへの対策を進め1ヶ月以内に電力不足を解消する計画を明らかにしました。しかしもちろんそれでまったく被害ゼロとはならないわけで、都築さんは、このことは「地震後に発電量の不足が起きるかもしれない、その時に限られた電力をどこに優先的に配分するべきなのですか」という問いが利用者(市民や産業界、行政)に投げかけられたと受け取るべきだと言います。

 現実に、東日本大震災では、病院や役場の自家発電施設が十分機能しなかったという例もあったということで、地震後にも絶対に電力を途切れさせることができない施設をどう守るか、あるいは足りない電力をどう公平に配分すべきかなどを、真剣に考えておかなければならないと都築さんは提言します。

 参加者の皆さんからも「この春からの電力自由化は対策にどのような影響を及ぼすのか」など、たくさんの質問がでて、対話が盛り上がりました。都築さん、参加者の皆さん、どうもありがとうございました。

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→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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