「南海トラフ巨大地震の津波が愛知を襲ったら?」
海岸工学者 川崎 浩司さん
(名古屋大学大学院工学研究科准教授)
今回のげんさいカフェのテーマは、南海トラフ巨大地震で予想される津波。8月末に政府が発表した最大級の津波被害想定について対話が行われました。
まずは川崎さんが津波の高さという言葉の意味など津波の基礎について簡単に説明したあと、今回発表された政府の津波想定のうち、東海地方の被害が最も大きく、①津波が堤防を超えると堤防が壊れるパターンと、②地震3分後に堤防が壊れるパターンについて、浸水想定地域の地図などを見せながら詳しく説明しました。
今回の津波想定について、川崎さんは、南海トラフ地震で隆起すると予想されている陸地については隆起させないという“厳しい”想定をしていることや、逆に10メートルを超える幅の堤防等は(地形の一部とみなして)地震で壊れないという“甘い”想定をしていることなど、実態にあっていないと考えられる点があることを指摘しました。もともと被害想定は前提条件を少し変えるだけで結果がまったく変わるだけに、発表されたものも「あくまで一つの想定に過ぎない」と肝に銘じる必要がありそうです。
今回のカフェも、たくさんの参加者があり「津波想定の精度はどの程度のものなのか」、「堤防が壊れるか壊れないかという要素が、なぜ被害想定の計算に入っていないのか」などの多くの質問が出ました。7時半の終了の時点でもすべての質問がさばききれないほどで、科学者と市民との活発な対話が行われました。
川崎さんは津波の専門家の立場から、堤防や防潮堤といったハード面だけに頼ることなく、「地震が来るまえに情報をしっかり入手して、“賢く逃げる”というソフト面とのバランスが大切」と強調していました。