第48回げんさいカフェを開催しました

「津波火災はなぜ起きるのか」

都市工学者 廣井 悠さん
名古屋大学減災連携研究センター准教授

日時:2015年5月13日(水)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館 減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦(名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。


 今回は東日本大震災でも注目された「津波火災」がテーマです。「津波火災」とあっさり呼んでしまいましたが、実はそもそも「津波火災」という言葉を作ったのは今回のゲストの廣井さんたちなのだとか。驚きましたが、確かに1993年の奥尻島の津波(北海道南西沖地震)の時には津波火災という言葉はありませんでした。

 さて廣井さんたちの調査によれば、東日本大震災で起きた約400件の火災のうちの約4割は津波の被災地域で発生した火災だったということです。このうち放火など全く関係ないものを除いた「津波が原因で発生した火災」が津波火災の定義だということです。昔の絵図などをみると明治三陸津波でも津波火災は発生しているようです。

 さて廣井さんたちが東日本大震災で起きた津波火災を詳細に調べた結果、いくつかのパターンで起きていることがわかったということです。

 1つは岩手県大槌町で起きたような「斜面瓦礫集積型」。津波で押し流された瓦礫が山の斜面にぶつかって集まり出火するものです。近くの山林にまで燃え移って延焼したケースもあったそうです。
 もう1つは宮城県名取市で起きたような「都市近郊平野部型」。平らな土地で、火のついた瓦礫が広い範囲に広がるため被害面積が大きくなるというのが特徴です。
 さらに宮城県気仙沼市で起きたような「危険物流出型」。石油タンク等から海に漏れた油に火がついてずっと燃え続けます。沿岸の家屋や山林にも引火して被害が広がることも。
 そして「電気系単発出火型」というのもあります。塩水をかぶった車の電気系統から数日後に出火したケースなどもあるということです。

 震災から4年。各地の消防本部へのアンケートや現地聞き取り調査等の研究によって、いまあの震災の津波火災の全貌が明らかになりつつあるそうです。このゴールデンウイーク中もずっとその仕事をしていたとか(笑)お疲れさまです。

 東日本大震災の津波火災による犠牲者は約200人。決して少なくはありませんが、震災全体の犠牲者からすれば1%強ということで、廣井さん自身は「マイナーな現象なので研究対象にもなりにくい」とおっしゃいます。しかし例えば、津波避難場所や津波避難ビルが津波火災に襲われると(他に逃げ場がないため)深刻な被害をもたらす可能性があります。まれにしか出会わない現象ながら、頭の隅には常に置いておかなければならないことだと思いました。

 懸念される南海トラフ巨大地震で、各県がどれくらい津波火災のリスクがあるのか計算した地図を紹介してくれた廣井さんは「津波から逃げるとき、少し無理をしてでも遠くの高台まで避難するのか、それとも近くの津波避難ビルを選ぶのか、とっさの判断を迫られるときがある。そういう時には、自分の住む場所にどのくらい津波火災リスクがあるのか知っておくと役にたつはず」とおっしゃっていました。

 今回もたくさんの参加者があり、活発な対話が行われました。廣井さん、参加者のみなさんありがとうございました。

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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