「東日本大震災の謎を耐震工学から考える」
平成24年3月21日(火)午後6時〜 護 雅史先生
今回のゲストは、耐震工学がご専門の護雅史さん。東日本大震災で震源地から約700キロも離れた大阪の超高層ビルがとんでもない揺れに見舞われたという“謎”についてのお話でした。
東日本大震災はM9.0という超巨大地震だったため、その揺れには長い周期の地震波も多く含まれていました。こういう長い周期の地震波は途中であまり減衰せず遠くまで伝わっていく性質があるため、東北地方太平洋沖の震源から遠く離れた近畿地方まで揺れが伝わっていったということです。
さらに今回、大阪の超高層ビルの揺れが大きくなったもう一つの原因が『共振』でした。建物には揺れやすい周期というものがあり、それはおおむねどのような素材(鉄骨、鉄筋コンクリート、木造)で作られているかや、何階建てか、というような要素で決まります。
また地盤にも揺れやすい周期というものがあり、今回の大阪の超高層ビルの場合、建っている場所の地盤の揺れやすい周期と建物の周期がほぼ一致してしまったため、共振が起きて揺れがきわめて大きくなったということでした。
このような共振が起きるかどうかや、どこまでその揺れが大きくなるか、ということには、その揺れが「どれだけ継続しているか」という「継続時間」の要素も重要で、今回の東日本大震災が3分以上も続く長い揺れであったことから、超高層ビルの揺れが徐々に成長して大きくなってしまったのでした。
こうした『共振』の現象は以前から知られていましたが、超高層ビルや巨大構造物の設計のなかで十分に考慮されるようになったのは最近のことで、次の東海・東南海・南海地震に向けて、この地方でも、そういう観点から今ある建物を見直していかなければいけないというお話でした。
参加者からは「軟らかい地盤を伝わっていくときに地震の波はなぜ大きくなるのか」など活発な質問が行われ、議論が盛り上がりました。護さん、ありがとうございました。
東日本大震災の謎を考えるシリーズは一応今回の10回めで終了。今後は、名古屋大学減災連携研究センターの研究者がリレーでそれぞれの研究テーマや話題についてげんさいカフェを継続していきます。
次回のカフェは4月16日(月)場所は同じカフェ・フロンテです。ゲストは建築史研究者の西澤泰彦さん。120年前の濃尾地震とその後の地震対策がどうなって行ったのかをめぐるお話をしていただきます。皆さん奮ってご参加ください。