第121回げんさいカフェ(オンライン)を開催しました

世界の火山噴火と「日本沈没」

ゲスト:地震学者 山岡 耕春 さん
   (名古屋大学大学院環境学研究科 附属地震火山研究センター教授)
日時:2021年 12月20日(月)18:00~19:30
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦 さん
(江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 最近、世界各地の火山噴火の話題がニュースをにぎわしてます。
 身近なところでは、日本の沿岸に軽石が流れ着いて大騒ぎになった「福徳岡ノ場」、そして海の向こうでもスペイン領カナリア諸島のラ・パルマ火山の噴火など。
 そこで今回のカフェでは、火山噴火に詳しい山岡耕春さんに、来ていただきました。
 一連の噴火をきっかけに、火山噴火のしくみをしっかり勉強しておくことも大切ですからね。
 まず福徳岡ノ場ですが、あの大量の軽石は何を意味しているかというと、専門家から見ると、噴火が大規模だったことの表れだということです。また、マグマに気体がたくさん溶けていることも表しています。
 カフェでは2021年8月13日の気象衛星ひまわりの画像を見せていただきましたが、日本列島の約2000キロ南、福徳岡ノ場から上空に上がった噴煙がしっかりと写っていて、それが東風に流されている様子もよくわかりました。3万6000キロ上空のカメラにはっきり写るくらいですから、その規模の大きさがわかります。
 この噴火はプリニー式噴火と呼ばれる爆発的な噴火だったそうです。福徳岡ノ場は、海上に噴火口が見え隠れするくらいの火山ですが、もし地上の火山であれば大規模な火砕流が発生するようなタイプの噴火だったということです。
 海上保安庁の航空機が撮影した写真も見せてもらいましたが、海の上に大きなきのこ雲が上がっていました。かつての水爆実験を思わせるような写真でした。


※福徳岡ノ場の噴火を捉えたひまわりの写真(右下に噴煙が写っています)

 さて火山噴火の原動力は、マグマに溶けていたガス成分が気体の泡になることによる浮力ですが、地下深くのマグマだまりからマグマを上昇させる役割を担っているのは二酸化炭素です。
 カフェでは、この二酸化炭素はどこから来たかということが話題になりました。答えは、地球が最初にできた時に取り込まれた炭素と酸素が化合したものだとか。つまり火山噴火は、何十億年も前の二酸化炭素が引き起こすということなんですね。一つ勉強になりました。(カフェでは話しませんでしたが、浅い場所では水蒸気が主な役割を担います)

 さてもうひとつ、最近の火山噴火では、2021年9月のカナリア諸島ラ・パルマ島のラ・パルマ火山の噴火が注目されました。こちらは海外ニュースでさかんに報道されました。特に溶岩流が森の中を流れてくる様子の映像が印象的でした。
 その映像を見ながら、ゲストの山岡さんと思い出したのが、1986年の伊豆大島三原山の大噴火。当時山岡さんは東大地震研の伊豆大島火山観測所にいらして、溶岩流が、観測所がある元町に向かって流れ始めたため、一時たいへん緊迫しました。
 私はその時のNHKの取材班の1人でした。溶岩流の先端に行って撮影した思い出があります。(山岡さんとは、そこでお知り合いになって以来のお付き合いなのです)ラ・パルマ火山の溶岩が少しずつ固まりながら森の中を進んでいく姿は、伊豆大島三原山の溶岩流とそっくりでした。

 溶岩にはハワイのキラウエア火山のように、川のようにさらさら流れる溶岩もあれば、雲仙普賢岳のようにごつごつとした岩の塊がゆっくり移動するような溶岩もあります。
 この流れ方の違いは主に溶岩=マグマの性質によるのだそうです。
 一般的に玄武岩が多く含まれるマグマは流動性が高く、流紋岩が多く含まれるマグマは粘性が高いとされ、この粘り気の違いは、数値で表すと8ケタ、つまり1億倍くらい違うのだそうです。
 溶岩の性質は噴火の様子にも影響します。粘り気の少ないマグマは、ガスがよく抜けるので、火口から溶岩流が流れる噴火になりやすく、粘り気の多いマグマはガスが抜けにくいために爆発的な噴火になりやすいという傾向があるということです。

 カフェの参加者の皆さんからは、噴火の予知はどこまで可能かという質問がありました。
 山岡さんによると、そろそろ何かが起きそう、何かがおかしいということまではわかるけれども、噴火が、いつ、どれくらいの規模で起きるかを正確に予測するのはなかなか難しいとのことでした。
 2011年2月の新燃岳の噴火では、観測データで噴火が近いらしいということがわかっていたけれども、ほとんど前触れもなく噴火が始まりました。一方で1986年伊豆大島三原山の割れ目噴火や、2000年の有珠山の噴火のように、あらかじめ火口がなかったところに溶岩が入り込んで起きるような噴火の場合は、事前に地震などが頻繁に起きるので比較的予測しやすいということです。
 噴火予測は、いつ噴火するかだけではなく、その後どう進展していくかということも大切ですが、そのまま収まるか、さらに巨大な噴火につながっていくかの見通しを、今の科学で正確に予測することはなかなか難しいということでした。

 山岡さんは、2006年の映画版「日本沈没」で監修と出演をされていますが、今回のTBSのドラマ「日本沈没-希望のひと-」でも監修をされたということで、今回のカフェでは、そのドラマの裏話もちょっと聞かせていただきました。
 ドラマのプロデューサーからは「関東は沈没させて、北海道は残してくれ」とか「地球温暖化を原因にしてくれ」などの無理難題を言われたということですが、専門的立場からいろいろ修正を加えて、いいドラマに仕上げていったのだそうです。
 あのドラマで、「スロースリップ」がリアルタイムで観測され、田所博士がそれをもとに警告するという設定は、山岡さんのアドバイスで盛り込まれたということです。他にも2000年の映画版のころにはなかった科学技術の進歩が随所に入っているとのことで、そういう目で改めてドラマを見直すのもおもしろそうですね。

 今回オンラインで270人以上の方に参加していただきました。山岡さん、参加者の皆さんありがとうございました。

cafe121
→ポスター(PDF)

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