第119回げんさいカフェ(オンライン)を開催しました

災とSeeing連携企画
「濃尾地震から130年〜改めて内陸型地震への備えを考える」

ゲスト:地震学者 平井 敬 さん
   (名古屋大学減災連携研究センター助教)
日時:2021年 10月13日(水)18:00~19:30
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦 さん
(江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 今回のカフェは、今年で発生からちょうど130年を迎える濃尾地震をテーマにしました。
ゲストの平井敬さんは、当センターが展開するプロジェクト「災とSeeing」の中のCBC中部日本放送とのコラボ企画⑤「濃尾地震編」に、説明役として登場されています。地震学者の立場から、改めて内陸型地震への備えを考えるということで、げんさいカフェに来ていただきました。
 1891年、明治24年の10月28日に濃尾地震がおきました。マグニチュードは8.0と、記録に残る内陸の地震としては国内最大規模でした。
 濃尾地震という名前は、いまの岐阜県にあたる美濃地方から、いまの愛知県にあたる尾張地方にかけて広い範囲で被害が出たことでついたのですが、死者7273人、全壊家屋が14万軒という大きな被害でした。130年前の日本の人口はいまの3分の1くらいでしたから、今でいうとその3倍、つまり2万人くらいの人が亡くなったようなインパクトが当時の社会にはあったと考えられます。美濃と尾張の国名にかけて「みのおわり(身の終わり)」地震という言葉が当時流行ったそうです。


 平井さんはまず、地震には主に2つの種類があることを説明してくださいました。
 東日本大震災のように、プレートの境界でおきる海溝型地震と、日本列島の地面の真下の活断層が起こす内陸型地震です。よく直下型地震という言葉が使われますが、これは正式な学術用語ではなくて、マスメディアが作った言葉です。どうしても大都市の直下で内陸型地震が起きると被害も大きくなるのでそう呼ぶのですが、心配されている首都直下地震も、内陸型地震として発生する可能性があると考えられています。
 平井さんによると、内陸型地震は、海溝型地震より相対的に規模が小さいことが多いのですが、震源と被害を受ける人の住んでいる場所が近いので、マグニチュードの割には被害が大きくなりやすいということです。
 濃尾地震を起こした活断層は、根尾谷断層とその北側の温見断層、南側の梅原断層の3つの断層が動いた長さ80キロにわたる断層です。


 震源に近い岐阜県本巣市あたりでは、8メートルも上下にずれてまして、いまでもその断層を見ることができます。現場には地震断層観察館が建てられていて、地下でどのように断層がずれたのか見ることができるそうです。
 内陸型地震は、震源と人の住んでいる場所が近いため、緊急地震速報が間に合わないことがあります。緊急地震速報は地震のP波を一番近い地震計で観測して、だいたいの震源とマグニチュードを数秒間で推定するという方法ですので、震源が近いとS波の揺れのほうが先に来てしまうということもあり得ます。
 130年前の巨大地震に学んで、改めて内陸型地震への備えは何かということで、今回、平井さんから教えていただいたのは、この濃尾地震で被害が大きかった地域というのは、必ずしも震源からの距離が近いところだけではなかったということです。震源から少し遠いところでも、例えば、琵琶湖の沿岸とか大阪、いまの名古屋市の西側、あるいは浜名湖周辺などでも震度6以上のところがあったのだそうです。
 これらの地域に共通しているのは、地盤の軟らかさ です。大きな川のそばに広がった広大な平野、こういうところに都市が発達しやすいわけですが、そういう場所がよく揺れて、被害が大きかったということです。
 それに備えるため、自分の住んでいる地域がどれくらい揺れやすいか知っておきましょう。平井さんによると、地元の市町村のハザードマップで揺れやすさを調べるか、もしパソコンにお詳しい方は、防災科学技術研究所のwebサイトの「地震ハザードステーション」というところを見ると、どれくらい揺れやすい地盤なのかすぐわかるということです。
 そしてなんと言っても家の耐震性を確認することが大事です。特に昭和56年(1981年)以前の旧耐震基準で建てられている木造住宅は、耐震診断をして、耐震補強や建て替えをして揺れに備えることが大切です。
 今回も全国から150人余りの方にご参加いただきました。活発な質疑応答もできました。平井さん、参加者のみなさん、ありがとうございました。



cafe119
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