第101回げんさいカフェ in ぼうさいこくたい を開催しました

名古屋大学げんさいカフェ in ぼうさいこくたい
新潟県中越地震から15年~知られざる活断層の真実

ゲスト:活断層学者 鈴木 康弘さん
   (名古屋大学減災連携研究センター教授)

日時:2019年10月19日(土)10:30~12:00
場所:ささしまライブエリア・名古屋コンベンションホール4階409会議室_B
  (愛知県名古屋市中村区太閤1丁目19−7
   最寄駅 あおなみ 線「ささしまライブ駅」 2階エントランス直結)
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦
   (江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。


 今回は、101回目にして初めて、名古屋大学以外の場所でカフェを開いてみました。全国の防災関係者が一堂に集まる「ぼうさいこくたい」というイベントが、ちょうど名古屋で開かれましたので、そこに参加する形で開かせてもらいました。

 今回のカフェでは、2004年10月23日に起きた新潟県中越地震から、ちょうど15年を迎えるということで、活断層地震の専門家、鈴木康弘さんにこの15年間を振り返っていただきました。

 鈴木さんによると、活断層による地震に対して、一般の人たちの認識と専門家の考え方の間には、ギャップを感じることがあるということです。
例えば、新潟県中越地震は当初、「活断層がないところに地震が起きた」と報じられました。その報道のほんとうの意味は、“すでに存在が知られていて、地震の発生が懸念されていた活断層”による地震ではない、という趣旨でしたが、一般の人たちには「活断層による地震ではない」という印象だけが残りました。
 その後、専門家が詳しい調査をした結果、この地震は小平尾断層という活断層が起こしたことが判明しましたが、その頃になると地震の発生メカニズムに対するメディア側の関心はすっかり低下していて、あまり大きくは報じられませんでした。
 その後も全国各地で2005年の福岡県西方沖地震、2007年の能登半島地震、新潟県中越沖地震、2008年の宮城岩手内陸地震と、立て続けにM6.5以上の地震が起きましたが、いずれも直後には「活断層の地震ではない(と思う)」と報じられ、その後の調査で活断層の存在が判明する、ということの繰り返しだったということです。
 メディアが、ていねいにフォローして報道しないと、地震直後の「活断層の地震ではない(と思う)」という情報だけが独り歩きして、多くの人の印象に残ってしまいがちです。
 一般の人たちと専門家のギャップは、こんなことからも生まれてくるのですね。メディアは、地震直後には活断層との関連ははっきりわからないことが当たり前だと知って取材してほしいものです。

 新潟県中越地震は、もう一つ大きな問題点を浮き彫りにしました。
 国は、阪神淡路大震災以降、全国にどんな活断層があるか、その活断層がどのような規模の地震を繰り返してきたかということを調査し、それを元に「全国地震動予測地図」を作って注意を呼びかけてきました。
 だだ、この予測は「一つの活断層は一定の規模(マグニチュード)の地震を、周期的に繰り返す」という仮定に基づいています。
 ところが話はそれほど簡単ではないようなのです。新潟県中越地震を引き起こした小平尾断層を詳しく調べてみると、15年前の地震では数十センチのずれでしたが、その一つ前の地震では2メートル以上もずれていて、「一つの活断層がいつも同じ規模の地震を起こしているわけではない」という事実を我々に突きつけました。
 また3年前の熊本地震でも、M6.5の前震が起きた2日後にM7.3の本震が起き、一つの活断層帯で起きる地震がいつも同じ規模で起きるとは限らないということを実証しました。
 鈴木さんによると、こうやってわかってきた新しい事実に基づいて、地震予測の方法を変えていかないと、現実に合わないのではないかとおっしゃっていました。

 この日のカフェでは、最近の驚きの事実も明かされました。
 熊本地震で大きな被害を受けた熊本県益城町の災害復興公営住宅が、活断層が地表に現れた場所の、ほぼ真上に建設されようとしているというのです。
 確かに「活断層は同じ規模の地震を一定の周期で繰り返している」という従来の考え方に立てば、一度動いた活断層は次の地震まで数千年間は動かないわけですから、家を建てても問題なさそうですが、鈴木さんは、ほんとうにそれでいいのかと指摘します。
 鈴木さんたちの益城町の熊本地震被害調査では「全壊家屋の94%が断層から120m以内に集中しており、断層からの距離が近ければ近いほど全壊家屋が多かった」という結果が出ており、断層の真上は特に危険です。徳島県が条例で規制しているように活断層の真上には重要施設を建ててはいけないというような規制が全国的に必要ではないかと話していました。

 いつもの減災館とは違って、イベント会場で開催するげんさいカフェということで、ちょっと心配していましたが、会場には満員になるほどたくさんの方が集まってくださいました。鈴木さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。


→ポスター(PDF)

※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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