第87回げんさいカフェを開催しました

高校生と元高校生のための地震学

ゲスト:地震学者 平井 敬 さん
   (名古屋大学大学院環境学研究科助教/減災連携研究センター兼任)

日時:2018年8月6日(月)17:00〜18:30
場所:名古屋大学減災館1階減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦
   (江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。


 タイトルに銘打ちましたように、今回のげんさいカフェは、夏休みの高校生も参加しやすいよう工夫をしました。スタート時間をいつもより1時間早めにし、飲み物は高校生は100円。もちろん学生証チェックなどの野暮なことはしませんので、元高校生の皆さんでも詰襟の学生服やセーラー服で参加してくだされば飲み物100円ですと申し上げていたのですが、さすがにそれに挑戦する方はいらっしゃいませんでした。(笑)
 実際には高校生だけでなく中学生も参加してくださって、いつもより平均年齢低めのげんさいカフェとなりました。
 
 さて今回のテーマは「地震学とはどんな学問か」ということです。高校生の皆さんにとって、将来の大学の学科選びに役立つのではと考えました。もちろん私たち「元高校生」にとっても興味あるテーマです。
 平井さんによると、地震に関わる学問はとても幅広いのだそうです。
地震現象そのものを探究するいわゆる“純粋地震学”は、学問体系の中では一応、自然科学分野の「地球科学」に分類されていますが、世の中の人たちが考える地震学者さん、つまり「地震を研究している人」というのは、もっと幅広い分野にまたがっています。
同じ自然科学分野だけでも、地球物理学、土木工学、建築学、地理学などを専門とする人たちが日夜、地震を研究しています。また防災教育や歴史学なども地震と深くつながりがありますから、社会科学分野、人文科学分野にも「地震を研究している人」がたくさんいます。つまり地震研究の世界には“いろんな入り口がある”ということなんですね。
平井さんご自身も、高専や大学の学部では化学を専攻されていて、大学院から地震研究の世界に”入って“こられたそうです。そして最近では、古文書を読み取って、昔の地震の被害状況を推定し、震源やマグニチュードをつきとめる研究にも関わっているということで、まさに人文科学にもまたがる学際的な活動をしていらっしゃいます。

カフェの後半では、理工学的な地震学のお話として、地震の規模を示す「マグニチュード」について詳しく対話をしました。
気象庁が地震の後、すぐに発表する「気象庁マグニチュード」は、マグニチュードの元々の定義である「震源から100キロ離れたところにある、特定の種類の地震計の、最大の揺れ幅」から計算するリヒターマグニチュードを若干修正したもので、経験則に基づいたものです。その地震が発するエネルギーの大きさをだいたい示してはいますが、地震の規模がかなり大きくなってくるとその通りに数字が大きくならない「頭打ち」という現象が起こります。
地震の発するエネルギーは、地震を起こす地震断層の「長さ」と「幅」「すべり量」「岩石の硬さ」に左右されます。そのすべて掛け合わせてやれば、地震の発するエネルギーを表すことができるのでは、ということで作られたのがモーメントマグニチュードで、米カリフォルニア大学の日本人研究者が作ったものだそうです。
東日本大震災のマグニチュード9.0だけは、普段の気象庁マグニチュードで計算すると頭打ちで8.4になってしまい地震の規模をうまく表せないので、モーメントマグニチュードが使われているのだそうです。ご存知でしたか?
このモーメントマグニチュードで換算すると、マグニチュード6という中規模地震でさえ、そのエネルギーはなんと広島型原爆一個分くらい、ものすごいエネルギーですね。
マグニチュード9の東日本大震災の地震は、その約3万倍。日本の火力発電所の年間総発電量にあたるということで、いかに大地のもたらすエネルギーが巨大なものであるかを実感できます。
そんな強大なエネルギーの地震が歴史上たびたび起きているこの日本で暮らしていることを考えると、やはり減災への備えは大切です。私たち自身の備えもそうですが、やっぱり地震研究者の皆さんにももっと頑張ってもらわないと、と思いました。(笑)

会場に来ていた中学生・高校生たちにも、ぜひ将来、防災・減災を進めていく人材に育ってほしいと願うばかりです。平井さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。



→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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