第82回げんさいカフェを開催しました

「激甚化する豪雨災害」

ゲスト:岩盤工学者 曽根 好徳さん
   (名古屋大学減災連携研究センター副センター長・地域社会防災計画寄附研究部門
教授)

日時:2018年3月5日(月)18:00〜19:30 
場所:名古屋大学減災館1階減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦
   (江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。


いろんな学びがあった今回のカフェの中でも、まさに「目からウロコ」だったのは、曽根さんが示した「最近の豪雨災害」というスライドでした。
年表にして並べてみると、日本国内では平成21年から9年連続で、死者が5人以上出るような豪雨災害が毎年毎年起き続けていたことが一目でわかります。
確かに去年の九州北部豪雨(死者・行方不明者41名)、一昨年の台風7、9、10、11号の連続による豪雨(同29名)、その前年の鬼怒川が決壊した関東東北豪雨(同14名)、その前の年は広島豪雨(同77名)がありました。その前年には伊豆大島の集中豪雨(同39名)さらにその前の年には、一つ前の九州北部豪雨で33名の死者・行方不明者が出ています。
注目すべきは、これらの豪雨災害は、いずれも「観測史上初」とか「異常な」といった接頭語つきで報じられたということです。地球温暖化の影響なのか、過去にまったく経験がないような豪雨に毎年日本のどこかが見舞われているということになります。曽根さんは、そういうことが起きても仕方がない時代に我々は生きているのだと考えてくださいと話していました。

もう一つ、なるほど、と納得させられたのが、岩盤工学の専門家から見た、斜面崩壊に対する考え方です。
そもそも斜面というものは、重力の影響で常に崩れようとしており、長い間に、地震が起きたり大雨が降ったりすると、そのたびに少しずつ不安定化していると考えるべきなのだそうです。雨による崩壊が起きるのは、いわば最後の一撃によるもの。ですから「去年はこれくらいの雨で大丈夫だったから今年も大丈夫だろう」という経験則は、いつも成り立つわけではないということなのです。

曽根さんは、去年の九州北部豪雨についての調査結果を詳しく報告してくださいました。やはり被災地の至る所で「観測史上初」「異常な」豪雨に見舞われていたということです。
しかしそんな中でも、とっさの機転や事前の備えが奏功して人命が救われたケースもありました。
その一つが朝倉市立松末(ますえ)小学校。避難所に指定されていた小学校の体育館を土石流が直撃するという予想外の事態となったのですが、その直前に異変を察知した校長が、避難住民を校舎の3階に移動させていたため、最悪の事態は免れたということです。
もう一つが、朝倉市の杷木松末本村(はきますえほんそん)地区。この地区の人たちは、指定避難場所の小学校や集会所まで1キロから4キロも離れていることから、あらかじめ皆で話し合って、高台の民家2軒を自主的な避難場所と決めていたそうです。豪雨の当日も、35人の住民がその2軒の民家にいち早く避難し、全員助かりました。
この付近の朝倉地区の11町内会では、2012年の(一つ前の)九州北部豪雨の経験をもとに、役員の皆さんがワークショップを開いて自分たちの防災対策を点検し、合同で自主防災マップを作製していたそうで、それが今回、大いに役立ちました。
地域のことは専門家よりも地元の住民のほうが良く知っているということが往々にしてあります。実際に朝倉地区の地元の人たちが作成した自主防災マップでは、農業用ため池の「山の神池」がすることも想定して浸水範囲が決められていましたが、今回の豪雨では実際その想定通りにため池の決壊が起きました。
「自分たちの命は自分たちで守る」という考え方の重要さを教えてくれるエピソードですね。曽根さんも、こうした取り組みを全国に広げるべきだと話しました。都会では隣に誰が住んでいるかも知らないということがよくありますが、それではいざという時に災害を減らすことはできない気がします。
今回もたくさんの質問が出て、対話が盛り上がりました。曽根さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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