第23回げんさいカフェを開催しました

「災害時の健康をまもる看護とは」

看護専門家 横内 光子さん
名古屋大学大学院医学系研究科看護学専攻 准教授

 今回のテーマは災害看護について。特に、過酷な避難所生活が長引いたときなどに、どうやって被災者の命を守っていくのか、看護の専門家の視点からお話いただきました。

 大災害時には、いつも飲んでいる薬が手に入らないとか、避難所の寒さや暑さ、プライバシーがないために眠れない、動かないためにストレスがたまるなど特有の健康被害が起きやすいことが知られています。それを横内さんは「生活激変病」と名付けているそうです。喫煙や運動不足など良くない生活習慣で病気になる「生活習慣病」になぞらえて、生活の大きな変化が、人を病気にしたり持病を悪化させたりするわけです。

 内閣府が東日本大震災の発生後1か月位の時期に、300余りの避難所を調査したところによると、その時点でも3割の避難所の電気やガスが復旧しておらず、4割の避難所の食生活の状態がかなり悪かったということです。また半数の避難所では下着の数が足りなかったり十分に洗濯ができない状態でした。特にプライバシーの確保はどこもうまくいっておらず、十分に確保できていたのは全体の4分の1にすぎませんでした。

 こうしたストレスの多い状態は、お年寄りや妊産婦、子供、障がいのある人など、いわゆる災害弱者の健康をむしばみます。
 ではそのことにどう対処していけばいいのか?
 まずは、医師、看護師、保健師などができるだけ丁寧に避難者の状態を見てアセスメントをすることで、できるだけ早く状態の悪い人を見つけ出すことが大切だと横内さんは言います。そして必要に応じて、病院に入院して治療をするなり、特別な設備を持つ施設をあらかじめ指定しておく「福祉避難所」に移ってもらうなりの対応をすることが重要だということです。

 兵庫県立看護大学では、阪神淡路大震災の経験をもとに、災害時の避難者の健康状態のチェックシートや避難所環境のチェックシートなどを開発しています。「命を守る知識と技術の情報館」というサイトhttp://www.coe-cnas.jp/にアクセスすれば、必要なものをダウンロードできるということでした。

 参加者との対話の時間では、福祉避難所に移ったほうがいいという判断はいったい誰がするのか?という質問に、現場の市町村役場の担当者や医療関係者が判断することになるだろうというお答えでした。また避難所に長くいるのは良くないのできるだけ早く自宅に帰った方がいいのではないか?という意見に対して、できるだけ自宅がいいのはその通りだが救援物資が届かなかったり医療支援から漏れてしまうおそれがあり、なかなか難しいなどの意見交換がおこなれました。
 地域ぐるみの防災をすすめているという参加者からは、避難所運営の図上訓練を看護学生がやっているという横内さんのお話を聞いて、避難する人の立場からの図上訓練の方法はないのだろうかという疑問も示され、これからは単なる避難所体験だけでなく、そうした取り組みも必要だという話になりました。

 今回も参加者と研究者の対話が盛り上がりました。横内さん、参加者の皆さん、どうもありがとうございました。

日時:2013年4月10日(水)18:00〜19:30
名古屋大学カフェフロンテ(環境総合館斜め前、本屋フロンテの2階。ダイニングフォレスト向かい)

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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