第75回げんさいカフェを開催しました

「新しい大雨警報をどう活かすか-危険度分布図の読み方を知る-」

ゲスト:河川工学者 田代 喬さん
   (名古屋大学減災連携研究センターライフライン地盤防災産学協同研究部門教授)

日時:2017年8月4日(金)18:00〜19:30 
場所:名古屋大学減災館1階減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦(江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。


 本格的な台風シーズンを前に、今回のカフェは、気象庁が7月から始めた「新しい大雨・洪水警報情報提供方法」をテーマに選びました。
 気象庁のホームページには7月4日から「大雨・洪水警報の危険度分布」という項目が登場しています。そして「大雨警報(浸水害)の危険度分布」「洪水警報の危険度分布」という2枚の地図で、濃い紫から薄紫、赤、黄色の順に、自分の地域の危険度が一目でわかるようになりました。
 このような情報提供はどうして行われるようになったのか。そしてそれを私たちはどう役立てればいいのか。河川工学の専門家で水害の問題に詳しい田代さんに聞いてみました。

 カフェでは、本題に先だって、先月の九州北部豪雨の現場を田代さんが調査されたということでしたので、まず被災状況の報告をお願いしました。
 今回の豪雨で被害が最も大きかったのは、九州最大の川・筑後川に、北側から注ぎ込む支流(中小河川)の流域だったということで、筑後川本川にはほとんど大きな被害はなかったということです。大分県日田市の小野川の被災地では、大規模な土砂崩れで川の流れがせき止められる河道閉塞が起きていました。

 田代さんによると、最近では、河川改修が比較的進んでいる大きな河川よりも、まだ河川改修が未整備のところが多い中小河川の方に、洪水被害が出る傾向があるということで、実は、今回の気象庁の新しい形の情報提供も、そのような傾向への対応という面もあるということなのです。

 というのも、大きな川が中小河川に比べて進んでいるのは、河川改修の点だけではなく、「洪水に関する重要な情報」を提供するしくみについても、そうだからです。
 気象庁は、全国400余りの主要河川については、国土交通省や都道府県と共同でリアルタイムの水位情報を提供したり、洪水注意報・警報をタイミング良く出したりする体制が整っています。しかしそれ以外の「その他河川」に分類される中小河川については、そういった体制が整備されていません。
 去年8月の「台風10号豪雨」で、氾濫してグループホームのお年寄り9人が亡くなった岩手県岩泉町の小本川(おもとがわ)も、当時は、国や県による洪水注意報・警報が出される体制が整っていない「その他河川」でした。こうした河川の流域では、市町村の防災担当者も、避難勧告を出す判断が難しくなりますし、住民にとってもどんな心構えをすればいいかわかりにくいですね。

 そこで、気象庁が今回提供するようになった新しい洪水危険度分布図では、このような「その他河川」を含む全国のおよそ2万の河川すべてについて、上流に降った雨の量などの情報をもとに、3時間後までの洪水の危険性が色分けされ一目でわかるようになりました。どんどん更新される情報を、監視していれば、洪水から自分の身を護ることができるかもしれません。

 田代さんは、普段は、市町村が配布している洪水ハザードマップなどを参考に、自分の住んでいる地域の水害危険度や、安全な避難経路・避難場所についての情報をあらかじめ知って備えておき、いざ雨が強く降りだしてきたら、今回の気象庁の新しい「洪水警報の危険度分布」図を活用して、最新の情報を入手してほしいと話していました。

 今回のカフェ、九州北部豪雨の直後だったこともあって関心が高かったのか、たくさんの皆さんに来ていただきました。田代さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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