第50回げんさいカフェを開催しました

「御嶽山災害の教訓は?~現場から火山防災を考える~」

防災学者 阪本真由美さん
名古屋大学減災連携研究センター特任准教授

日時:2015年7月3日(金)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館 減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦(名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。


 今回のゲストは防災学者の阪本さん。阪本さんは、去年9月の御嶽山噴火の後と、今年5月の口永良部島の噴火の後に、それぞれ現地で調査を行ったそうです。
御嶽山では63人の死者・行方不明者を出す戦後最悪の火山災害となってしまいました。そこから私たちはどんな教訓を学ぶべきなのでしょうか?

 全国におよそ110ある活火山のうち、噴火災害の可能性を考慮して気象庁が常時監視をしているのは47火山。そのうち地元自治体や気象台、国の出先機関、火山の専門家らで作る火山防災協議会で協議がまとまった30火山については、5段階の噴火警戒レベルが設定されています。
御嶽山にも警戒レベルが設定されていました。つまり多くの市民は今回噴火が起きるまで強く意識していませんでしたが、御嶽山は過去35年間に4回噴火するというように、活発な火山活動をしている山でした。

 去年の御嶽山の噴火は、秋の紅葉シーズンのさなか、お昼時で火口周辺にたくさんの登山客がいる時に起きました。この時の噴火警戒レベルは1=平常、その状態で不意打ちを食らったことが被害を大きくしました。
噴火警戒レベルでは、地元の自治体や防災関係者の対応が、火山防災協議会での協議に基づき「このレベルならこうする」という形で警戒レベル別に定めれています。あらかじめそうしたルールを決めておくことによって、いざという時の防災対応をスムーズに進めようという狙いなのですが、一方で警戒レベルが引き上げられないと対応には結びつかないという一面もあります。
御嶽山では、噴火の2週間ほど前の9月10日、11日ごろに火山性地震の回数が増え、1日50回を超えました。気象庁は火山に関する観測情報をだし、地元放送局はそれをローカルニュースでそのまま伝えましたが、とても「噴火が近づいているので火口に近づいてはいけない」と感じられるような内容ではありませんでした。

 その後、しばらく地震活動が低下し、このまま噴火せずに推移するかなと思われた頃に突然噴火が起きました。観測によって噴火の前兆を正確にとらえることや、噴火の推移を予想することはたいへん困難というのが現実なのです。
 
 阪本さんによると、口永良部島では去年8月の噴火警戒レベル1(平常)から3(入山規制)に引き上げられていた上、その時の経験に基づき、その後の10か月間で、いざ噴火が起きた際に、住民や自治体がどのような行動をとるのか、検討・訓練を繰り返していました。噴火したら、情報をまたずに、一人一人が直ちに避難することが強調されました。今回の噴火では、住民が、噴火を見て、ただちに避難したことにより犠牲者を出さず避難が完了しました。ただ、去年の噴火の時も、そして今年の噴火の時も、噴火警戒レベルが引き上げられたのは、実際に噴火が起きた後でした。それが現実なのですね。

 御嶽山噴火後の地元(岐阜県下呂市小坂町)住民に対して阪本さんが行った調査では、地元の住民は、過去の噴火災害については良く知っていたものの、土砂災害や地震に比べ噴火のリスクを低く感じていたことや、行政に対して携帯電話スマートホンなどでできるだけ多くの情報を提供して欲しいと考えている一方で、自分たちからすすんで知識を収集したり勉強したりすることには消極的だということがわかりました。
 
阪本さんは、北海道有珠山で、過去の噴火の経験を忘れず次の防災対策に生かすために、地元の自治体や研究者が中心になって、火山マイスターなどの人材育成を進めたり、登山者向けの情報提供を積極的に進めたりしているという例を引き、全国の火山でも同様の取り組みが必要ではないかと提言されました。火山活動に関するリスクコミュニケーションの観点からは、行政や科学者任せにするのではなく、住民一人ひとりが積極的に取り組むことが必要なんですね。

 会場の皆さんとの質疑応答も、これからの火山防災を巡って盛り上がりました。「現状では火山の研究者が少ないというが、これから増やすためにどうすべきか」や「御嶽山の被害者の方や口永良部島の避難者の皆さんのためにいま何ができるか」などの多くの質問が出ました。阪本さん、参加者の皆さん、どうもありがとうございました。

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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