げんさいカフェ(第15回)

「忘れられた “栄村大震災” を考える」

地盤工学者 曽根 好徳さん
(名古屋大学減災連携研究センター 地域社会減災計画寄附研究部門教授)

 今回は「東日本大震災はまだ終わっていない」とおっしゃる地盤工学者の曽根好徳さんがゲストです。
 去年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.0)から1年半あまり、もう地震は終わり復興の時期に入ったという印象を持つ人が多いかもしれません。しかしまだ余震や誘発地震は時折起きています。過去の歴史を振り返ると、本震から何年もたってから大きな誘発地震が起きる例はたくさんあり、曽根さんは「まだ私たちは東日本大震災の全体像がわかったと思ってはいけない、まだ何かが起きると思って備えることが大切」と話します。

 誘発地震の実例として曽根さんがあげたのが、本震の13時間後に長野県北部を襲ったM6.7の地震。この地震では長野県栄村などで建物の倒壊や大規模な地盤災害が発生し、地元では”栄村大震災”と呼んでいます。しかし巨大津波や原発事故の陰に隠れてこの地震の被害は全国的にはほとんど報道されませんでした。
 現地の地盤災害対策に携わった曽根さん、この地震によって起きた2か所の土砂崩れが、表層だけでなく深いところから地盤が崩れる”深層崩壊”だったと見ています。そして崩れた土砂が雪の上を何キロも流れ下ったこと、川がせき止められて一時大規模な土石流が心配されたことなど、地震がもたらす地盤災害のすさまじさをリアルに感じることができたカフェでした。

 会場の参加者からは「栄村の被害が全国的に注目されなかったことで、どのような問題が生じたのか」「栄村役場はどのような情報発信をしたのか」などの質問がでて、情報発信があまりなされなかったことで義捐金や救援物資が十分に集まらなかったことなどが紹介されました。今後の巨大地震にむけて、この地方の人たちも、救援の手をうまく受けることができる「救けられ上手」になるための方策を考えなければならないということも指摘されました。

→ポスター(PDF)
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