第40回げんさいカフェを開催しました

「地層に残された巨大地震・津波の記録」

地質学者 岡村 行信 さん
名古屋大学減災連携研究センター客員教授/産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門 首席研究員

企画・ファシリテータ:隈本邦彦
  (名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との
共催で実施しています。


 今回のゲストは、減災連携研究センター客員教授で、産業技術総合研究所の岡村行信さんです。茨城県つくば市からおいでいただきました。

 岡村さんは、津波堆積物を調べて過去の地震や津波を探る研究をされています。大きな津波が陸地を襲うと、大量の海水とともに「海岸の砂」が内陸まで運ばれます。津波が引いていくときには、押し寄せるときに比べ動きが緩やかなので、砂はそのまま内陸に残ることが多いのです。ということで、地層の中に海砂の層が見つかれば、そこは過去に津波に襲われたことがあると推定できるというわけです。

 岡村さんたち産業技術総合研究所のグループは、仙台平野と石巻周辺で、この方法を使って津波の痕跡を探し「869年の貞観地震の津波が仙台平野の奥深くまで砂を運ぶほどの大津波であったこと」を確認しました。しかも450〜800年に一度くらいの周期で同じような津波が起きていた可能性があるとして、対策の必要性を訴えていたそうです。しかしその対策が十分行われるよりも早く、2011年の東日本大震災が起きてしまったのです。残念なことです。

 将来、南海トラフ巨大地震による津波が心配されていますが、岡村さんたちは、南海トラフ沿いで過去に繰り返し起きている津波についても、津波堆積物の調査でその実像を解き明かそうと研究しています。例えば和歌山県串本町にある景勝地「橋杭岩」の付近では、過去の津波で岩石がかなり遠くまで運ばれた痕跡が残っているということです。

 会場の参加者からは「砂の層が海から来たと判断する根拠は?」という質問が出て、岡村さんは「例えば海にすむプランクトンが混じっているかどうかや、鉱物の組成などの情報をもとに判断をするが、いろいろな要素がからむので簡単ではない」「広い範囲で調べると、津波堆積物であれば、海岸から遠いほど次第に砂の層が薄くなっていくという特徴がある」と答えていました。他にも「砂の層の厚みから津波の高さは推定できるのか」などのたくさんの質問がでて、今回も対話が盛り上がりました。

 津波堆積物の調査研究は、東日本大震災以降大きな注目を集め、全国各地でさかんに進められています。「さまざまな限界はあるが、過去の地震の発生間隔やその規模を推定するための有力な研究手法」と考える岡村さんも、「全国で行われている調査研究の質を保つことも大切」と話しておられました。岡村さん、参加者のみなさん、ありがとうございました。

日時:2014年9月3日(水)18:00〜19:30
名古屋大学減災館 減災ギャラリー

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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