第39回げんさいカフェを開催しました

「巨大地震で堤防はどうなる?」

地盤工学者 野田 利弘 さん
名古屋大学減災連携研究センター副センター長・教授

企画・ファシリテータ:隈本邦彦
  (名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との
共催で実施しています。


 今回のテーマは、ずばり「南海トラフ巨大地震が起きたら堤防はどうなるか」でしたが、地震による液状化現象などの土の挙動についての専門家・野田さんからの答えは「強く長い揺れに遭遇すれば、対策が不十分な堤防は壊れます」 でした。ショックですね。

 野田さんは冒頭、愛知県内の「とある堤防」が、東海・東南海・南海地震で想定される揺れに見舞われた場合のコンピューターシミュレーション画像を見せてくれました。すると揺れが最大の強さに達するまでの間に、堤防は無残にも崩れ元の高さの半分くらいになってしまいました。

 会場の参加者からは「海抜ゼロメートル地帯でこのようなことが起きたら、津波警報が発表される前(揺れた直後か揺れている最中に)川の水が津波のように押し寄せてくるのではないか」という質問が出ましたが、野田さんの答えは非情にも「そうです」。愛知県が最近行った被害予測調査でも、濃尾平野の一部では、地震発生から30分以内に浸水すると想定されている地域があり、そういう場所は「堤防が地震で壊れて川の水があふれ出す」という想定なのだそうです。

 地震で堤防が壊れてしまうと、その後に津波が襲ってきた場合、そこから浸水が広がってしまいます。3年前の東日本大震災でも、東北地方関東地方の各地で、河川堤防が揺れで壊れる被害が出ましたが、特に宮城県石巻市などの高い津波に襲われた地区では、河川堤防が壊れたことで浸水被害が拡大してしまった事例がありました。

 さて巨大地震で堤防が壊れないようにするための対策としては、どのようなものがあるのでしょうか?

 まず堤防の両脇に鉄の板=矢板を打ち込む方法が考えられますが、これがなかなか難しいようです。野田さんたちが行ったコンピューターシミュレーションをいくつか見せていただきましたが、矢板の打ち込み方によっては、むしろ被害を拡大する恐れもあるのだそうです。

 効果的な対策の一つと考えられているのが、堤防の両脇に矢板を打ち込んだうえで、その矢板の頭部同士を鋼の棒で結び固定する、タイロッドを用いた工法。これをやると揺れの被害がかなり小さくなります。南海トラフ巨大地震に向けて、こうした対策を、特に海抜ゼロメートル地帯については早く進めていかなければなりませんね。

 この日の名古屋は夕方から雷を伴った強い雨が降るあいにくの天気でしたが、たくさんの方が集まってくださり、活発な質疑応答が行われました。参加者の皆さん、野田さん、ありがとうございました。

日時:2014年8月6日(水)18:00〜19:30
名古屋大学減災館 減災ギャラリー

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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