第37回げんさいカフェを開催しました

「阪神淡路大震災からの20 年を振り返る -活断層を中心に-」

活断層学者 鈴木 康弘 さん
名古屋大学減災連携研究センター教授

企画・ファシリテータ:隈本邦彦
  (名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との
共催で実施しています。


 今回のゲスト鈴木康弘さんは、今月102回目を迎えた名古屋大学防災アカデミーの栄えある第1回の講演者だったそうです。その講演が行われたのがちょうど10年前の2004年。そのときのテーマは、1995年の阪神・淡路大震災から「もうすぐ10年になるのに」日本の活断層地震への対策は進んでいるのか、ということでした。
 それからさらに10年。「もうすぐ20年になるのに」日本の対策は進んでいるのか、今回のげんさいカフェで改めて問うことになりました。

 阪神・淡路大震災後の10年間に、全国の約100の主要活断層の調査が一斉に行われましたが、あまりに急いで一斉に行ったために人材不足が生じ、その調査結果は玉石混交、残念ながら信用できないものも中にはあったということです。
 そして2004年以降の後半10年間は、活断層研究者にとってさらに厳しい時代だったと鈴木さんは振り返ります。新潟県中越地震、新潟県中越沖地震、岩手・宮城内陸地震と、それまでの活断層研究の知識では説明しにくい地震が立て続けに発生、学者として説明に苦労する場面もあったとか。「活断層がないのに地震が起きた」「活断層はあてにならない」と盛んに言われたものの、実際には活断層の事前確認が不十分だっただけと振り返ります。地震直後にしか興味を示さない報道機関にも責任の一端がある。
 そうした混乱は、地震発生原因についての誤解を広げるだけでなく、活断層に世間の関心が集まることを歓迎しない一部の行政や原発推進派に、都合よく利用されたのではないか。確実な証拠がなければ“活断層はない”ことにされがちで、それが積極的な地震対策を遅らせることになりかねない。

 活断層で次にどのような地震が起きるのか、活断層の真上やごく周辺でどのような被害が起きるのかということは、今の科学では十分予測できません。「研究をすればするほど、自然現象は複雑であって“わからないこと”も増えてくる」と鈴木さんは表現しました。
 
 それでも防災上、活断層に気を付けることは重要です。「活断層は滅多に動かないから、隕石の落下と同じで備えようとしても無駄・・」という人もいる、しかし「予測可能性」やと、「回避可能性」をよく確かめて、それらがあるものとないものを混同してはいけない、と鈴木さんは言います。活断層がそこにあれば、被害をある程度予測でき、そこを避ければ最悪の事態を回避できる。せめて活断層の真上には防災上大切な建物や安全上の重要構造物は作らないようにして、地震が起きた後に「ああしておけば良かった」とか「こんな被害、ほんとうは避けられたのに」と後悔しないような対策が求められています。

 会場からは、名古屋市の下にはどのような活断層があるのか、南海トラフ巨大地震の前後に活断層による地震が活発化するということはあるのか、活断層地震による被害を防止するには具体的にどうすればいいのかなどたくさんの質問が出て、今回も対話が盛り上がりました。結局、どの活断層がいつごろどう動くかと心配するのではなく、活断層に近ければ震度7にもなりえることを忘れず、家の耐震化や家具固定を進めることが大事だという意見も出ていました。
 鈴木さん、参加者のみなさん、どうもありがとうございました。

日時:2014年6月4日(水)18:00〜19:30
名古屋大学減災館 減災ギャラリー

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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