げんさいカフェ(第6回)

「東日本大震災の謎を地盤工学から考える」

平成23年11月28日(月)午後6時〜 野田利弘先生
(減災連携研究センター/地盤工学)

今回のカフェのゲストは、液状化災害の専門家、野田利弘さんです。野田さんのお話は次のようなものでした。
東日本大震災では、震源から450km離れた千葉県浦安市で、それほどの震度でもなかったにもかかわらず、なぜか広範囲の液状化現象が起きました。戦前からの埋め立て地は液状化せず、戦後に埋め立てた地域が液状化したことから、報道などでは「埋め立てから時間がたっていないため地盤が安定していなかった」と報じられ、もっぱら「埋め立て時期」だけが問題とされました。しかし、ほんとうにそうなのでしょうか。液状化しやすい砂粒の大きさは50ミクロン〜2ミリと言われていますが、浦安ではもっと細かい粒なのに液状化が起きました。これも今回の大震災の謎の一つです。
野田さんたちの研究グループは、液状化しなかった埋め立て地と、液状化した埋め立て地の地下の構造を明らかにするためボーリング調査を行いました。その結果、液状化したところの地下には分厚いやわらかい粘土層があるという特徴がありました。さらにコンピュータシミュレーションを使って、地震の揺れを再現してみたところ、やはり分厚い粘土層の上では液状化が極めておきやすくなることが確かめられました。このことに、今回の地震の揺れの継続時間が長かったことが加わって、比較的弱い震度でも液状化が広範囲に起こったと考えられるということです。
野田さんのお話の後半は、液状化の防止方法でした。液状化を防止するためには密度増大工法(地盤を締め固めながら柱上の基礎を入れていく)、固化工法(セメントミルクを建築物の下に入れて固める)、地下水位低下工法(井戸を掘って地下水位を低くする、ただしまわりに悪影響がある)、せん断変形抑制工法(土地を枠で囲って横方向の揺れを抑える)等の方法があります。
こうした液状化対策はいずれも大規模な工事が必要で、小規模な一戸建て住宅で対策をしようとすると費用がかなりかかったり、大型機械を入れられない等の様々な問題があるということです。液状化がするところは、何度も液状化するのだそうです。
今後の都市計画を立てるときには、地盤のことも充分に考えて計画をたてないといけません。
げんさいカフェは、一度参加してもためになりますが、繰り返し参加すると、さらに話が結びついておもしろくなっていくような気がします。
次回はクリスマスの翌日26日に、同じくIBカフェでの開催です。冬休みの学生さんのご参加もお待ちしています。

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