第29回げんさいカフェを開催しました

「南海トラフ巨大地震の地中埋設物被害を考える」

地盤工学者 野中 俊宏さん
名古屋大学減災連携研究センターライフライン地盤防災寄附研究部門助教

企画・ファシリテータ:隈本邦彦
  (名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との
共催で実施しています。


 今回のテーマは、ガス管、水道管、下水道管など地下に埋められたライフラインが、南海トラフ巨大地震でどのような被害を受けるかでした。名古屋大学大学院から東邦ガスを経て、現在減災連携研究センターの助教を務める野中さんは、地下に埋められたものは、地上に建てられたものに比べ地震の揺れには強いが、地盤の状態の変化などには弱い特徴があるといいます。そして特にまわりの土が液状化をすると、浮力で浮き上がったりして、大きな被害を受けることになります。さらに東日本大震災では、津波の引き波で土がえぐられる洗掘が起き、地中に埋めた埋設管が被害を受ける例もありました。

 こうした地震への対策として、鋳鉄管の接合部に抜け防止対策を施したり、多少の変化では折れないようにしなりやすい材料を管に使う等の対策がとられており、マンホールが液状化で浮き上がらないよう、その部分に特別な工事をするといった対策も行われているそうです。

 いまのところガス管の耐震化率は、全国的にみて80%くらい、東邦ガスの管内ではもう少し進んでいるようですが、まだ100%には達していません。南海トラフ巨大地震の発生に向けて、優先順位をつけて、計画的に耐震化を進めていく必要があります。野中さんによると、管路のネットワークの観点からその場所が切れた場合の影響が大きいところの優先順位が高いそうです。また、過去の地形の情報などをもとに、例えばかつて川が流れていた場所などは液状化が起こりやすいため、そういうところから優先的に耐震化を進めることが重要だということです。

 会場の参加者からは「液状化しても簡単に浮き上がらないように重い管を使うといいのではないか」など、貴重なアイデアが提案されていました。

 いずれにしても、一定以上の揺れを観測すると、安全のため、その地域のガスの供給はいったん遮断されるしくみになっています。人海戦術の点検で無事を確認してガス供給が再開されるまでには時間がかかります。広い範囲で被害が出る巨大地震の場合はなおさらです。この地方のみなさんはガスが出なくなることに備えて、カセットコンロ、ガスボンベ等の備えが必要ですね。野中さん、ありがとうございました。

日時:2013年10月2日(水)18:00〜19:30
名古屋大学カフェフロンテ(環境総合館斜め前、本屋フロンテの2階。ダイニングフォレスト向かい)

げんさいカフェのファシリテータについて


げんさいカフェのファシリテータは、NHK時代に科学報道に長く関わられた、サイエンスコミュニケーションの専門家である隈本邦彦氏(江戸川大学教授/減災連携研究センター客員教授)にお願いしております。毎回のカフェのゲストである各分野の専門家から、市民目線で科学的知見を聞き出し、分かり易い言葉で参加者に伝える事で、従来にない防災教育・啓発の実践が可能になります。

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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