第104回げんさいカフェを開催しました

必ずくる震災で日本を終わらせないために。

ゲスト:地震工学者 福和 伸夫 さん
   (名古屋大学減災連携研究センター長・教授)

日時:2020年1月28日(火)18:00~19:30
場所:名古屋大学減災館減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦
   (江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。

 このところ毎年、年の初めのゲストは福和さんに来ていただいています。
 今回は、福和さんが昨年出版された「必ず来る震災で日本を終わらせないために。」をタイトルとさせていただきました。本では書ききれなかった思いを、このげんさいカフェを通じて発信していただこうという趣向です。当日は100人を超える参加者の皆さんに来ていただきました。

 さて最初の話題は、ちょうど25年が経った阪神淡路大震災。震災直後に福和さんが撮った神戸市内の写真と、ごく最近撮った写真を見比べて、何が変わったのか、何が変わっていないのかを皆さんと一緒に考えました。
 被災地神戸は、この四半世紀ですっかり復興しました。でも、例えば建物の1階を駐車場にして、柱だけで支える構造=ピロティ形式=のマンションが震災で倒壊してしまったのに、再建するときにやっぱり同じように1階を駐車場にしてしまった写真や、大通りに面した雑居ビル群が、25年前と同じ建ち並び方をしているという写真が報告されました。きっと所有者の権利関係などが難しくて、“過去の経験に学ぶ”ということが簡単にはいかないのでしょう。
 さらに六甲山から撮った神戸の景色を見ると、長周期の揺れで強く影響を受ける超高層ビルが25年前よりかなり増えていて、そういう点では地震に対する脆弱性が増した部分もありそうです。

 阪神淡路大震災の最大の教訓は「家の耐震性が大事」ということでした。直接死5500人の8割が倒壊した家屋の下敷きになって死亡したと推定されるからです。しかしその“過去の経験”に、まだ全国の国民は学びきれていないというのが現状です。政府が掲げている住宅耐震化率95%の目標は、本来の達成年度とされていた来年度には、とても達成されそうもありません。(2013年推計でまだ82%です)

 一方で、この25年間で日本の防災力はかなり低下していると福和さんは指摘します。
 高齢化が進んで、18歳人口が34%減っているのに対して、65歳以上の人口が約2倍に増加。消防団員の数は減少の一途をたどり、地方公務員の数も25年前に比べ約2割減っています。ですからいざ災害発生という時に、公助が次第に期待ができなくなっているのです。つまり自助、共助の重要性がこの四半世紀でさらに増しているということです。

 とはいえ、巨大地震はいつか必ずやってきます。
 福和さんによると、年号に「和」がつく時代は過去18回ありましたが、そのうち3度も南海トラフ巨大地震が起きているということです。
 令和の時代に生きる私たちも、決して油断することなく、地震に備えて家の耐震化、家具の固定、水や食料の備蓄などをしっかりとしていきたいと思いました。
 参加者の皆さん、福和さん、ありがとうございました。



→ポスター(PDF)

※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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