第25回げんさいカフェを開催しました

「災害廃棄物・津波堆積物の有効利用をめざす」

地盤工学者 中野 正樹さん
名古屋大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻教授

 東日本大震災で発生した2000万トンの災害廃棄物と1000万トンの津波堆積物をどう処理していくのかが、今回のテーマでした。減災連携研究センターの兼任教員で、この問題に専門家の立場で関わっている中野さんにお話を聞きました。

 被災地の早期の復興のためには、まずこれらの廃棄物・堆積物の処理を急がなければなりません。国は来年3月末までに、すべての災害廃棄物と津波堆積物の処理を終わる計画だということで、中野さんのお話では、最初に取りかかった廃棄物の方はもう6割方処理が終わっているということです。意外と進んでいるんですね。津波堆積物のほうはまだ処理実績は3割ですが、いちおう来年3月末の目標は達成できる見込みだそうです。

 ひとくちに災害廃棄物といっても、その種類はさまざま。それぞれに適した方法で処理をする仕組み(国のマスタープラン)ができているのだそうですが、できるだけ現地での公共工事の地盤材料などとして、使えるものは使っていこうという考え方がとられています。ただし、木くずなどのがれきが混じってしまっている土を工事に使ってもほんとうに大丈夫なのか。過去の経験もデータも少ないため、それがよくわからないのだそうです。

 中野さんは地盤材料などを研究する専門家として、廃棄物扱いされそうになっているがれき混じりの大量の土を、なんとか現地でうまく使えないか研究を進めてきました。カフェではそのデータの一部を見せてくださいましたが、そんな土も、同じく被災地で発生したコンクリートガラ(コンクリートくず)を細かく砕いて混ぜてやると、なかなかしっかりした地盤材料に変身することがわかってきたようです。実験の結果は、これなら被災地の復興に使えるかもという期待が持てるデータだとか。セメントを混ぜてやるともっと強くなるそうです。

 今後の課題は、混じった木くずなどが将来腐敗したりして土に空洞ができてしまったらどうなるか?などの耐久性の問題だということで、こういう問題にもコンピューターシミュレーションなどを使って取り組んでいこうとしているそうです。

 会場からは、コンクリートガラを再生して建物を作ったら、その耐用年数はどうなるのか?漁網などのプラスチックごみの処理はどうなるのか?などさまざまな質問が寄せられていました。

 私たちの地域でも、南海トラフ巨大地震が起きれば、大量の災害廃棄物と津波堆積物が発生すると予想されます。これまで東日本大震災の被災地のために進められてきた中野さんたちの研究は、きっと将来、この地域にも役立つことになると思います。中野さん、ありがとうございました。

日時:2013年6月5日(水)18:00〜19:30
名古屋大学カフェフロンテ(環境総合館斜め前、本屋フロンテの2階。ダイニングフォレスト向かい)

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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