第59回げんさいカフェを開催しました

「建物の揺れと地面の揺れはどう違う?」

ゲスト:耐震工学者 護 雅史さん
(名古屋大学減災連携研究センター特任教授)

日時:2016年4月13日(水)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館 減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦(名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。

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 とても当たり前のことですが、地震計がとらえる地震の波形は「地面の揺れ」そのものです。その揺れが建物を揺らすのですが、その二つの揺れの関係は”いつも同じ”ではないのだそうです。

 耐震工学を研究されている護さんが、カフェの最初に示したスライドは、2007年新潟県中越沖地震の直後の柏崎市役所の写真。1968年に建てられた古い鉄筋コンクリート5階建てのビルは、震度6弱の烈しい揺れに見舞われながらなぜかほとんど被害を受けませんでした。このミステリーを理解するためには、護さんが研究テーマの一つにしているこの問題=「地震による地面の揺れと建物を揺らす揺れとは時には違うことがある」ということをしっかり解明する必要があるようです。

 建物には必ず基礎の部分がありますね。コンクリートを敷いただけの「べた基礎」や、杭を深く打ち込んだ「杭基礎」などいろいろありますが、この基礎の種類によって地震による建物の揺れは変わるのだそうです。また、ビルに地下室があるかないかによっても建物の揺れ方に違いが出ることが、計算上もわかっていますし、実際の観測データでも裏付けられています。
 さらに建物の固さと地盤の固さの(相対的な)関係も、建物の揺れの違いに影響します。建物が揺れることでその場所の地盤が変形するためで、こうした”建物と地盤の間の動的相互作用”のために、建物がいつまでも揺れ続けたり逆に揺れがすぐに収まったりするそうです。

 こうした”動的相互作用”は、実際の一般建物の設計の時にはあまり考慮されていないのが実情だそうです。建物の揺れが地面の揺れより小さくなる側に変化することについては耐震性に余裕が増えるのでいいことですが、逆に揺れが大きくなるような変化は時には耐震性の不十分さにつながる可能性があり、もっとこの分野の研究を進めていく必要がありますね。

 最後に、冒頭に紹介された柏崎市役所の写真がもう一度登場、建物の被害が少なかったのは、ひょっとしたら地下の基礎杭になんらかの損傷が発生したことによって、建物の揺れが少し小さくなったかもしれないという護さんの仮説が披露されました。52年前の新潟地震では、ある建物でそのような現象が起きたそうで、カフェで相互作用の話をしっかり理解した参加者のみなさんたちは、なるほどなるほどと納得しておられました。

 会場からは「地下室の大きさや重さは相互作用にどんな影響をあたえるか」などのたくさんの質問が出て、今回も対話が盛り上がりました。護さん、参加者のみなさん、ありがとうございました。

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→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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