第60回げんさいカフェを開催しました

「熊本地震から1か月でわかってきたこと」

ゲスト:減災連携研究センター長 福和 伸夫さん

日時:2016年5月13日(金)18:00〜19:30
場所:名古屋大学減災館 減災ギャラリー
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦(名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との共催で実施しています。

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今回は熊本地震の発生からちょうど1か月ということで急きょ予定を変更、この地震について現時点でわかっていることを専門家に読み解いていただきました。

福和さんは、建築基準法が求める耐震基準というのは、あくまで最低基準だとおっしゃいます。耐震基準が求めているのは震度6強くらいの地震で家は壊れるかもしれないが中にいる人の命を守れるという程度の強さ。本当ならもっと耐震性を高めたほうがいいに決まっているのに、すべての国民にそれを求めるのは無理というのが国の姿勢だというのです。その問題点が今回の熊本地震でもはっきりと表れました。

今回の地震では、1981年に施行された「新耐震基準」を満たしているはずの建物がいくつも壊れました。確かに耐震基準は震度7でも壊れないという強さは求めていませんし、複数の連続地震に耐えることも求めていません。今回2度の震度7に見舞われた地域では、最初の地震で損傷して2度目の地震で倒壊したという家もあったと考えられます。

16日の本震のマグニチュード7.3というのは、21年前の阪神淡路大震災とまったく同じ規模です。しかしいまのところの死者・行方不明者は、阪神淡路大震災の約100分の1。熊本県の人口は当時の兵庫県の3分の1ですが、それを考慮しても大幅に地震による死者が減ったということは、この間に日本社会が進めてきた地震対策が効果をあげたということなのでしょうか。

それを確かめるため、福和さんは、どちらも震度7に見舞われた神戸市東灘区と、熊本県益城町を比較しました。
阪神淡路大震災当時の東灘区の耐震化率は36%くらいで、地震による住宅の全壊率は約20%でした。一方益城町では耐震化率が62%くらいに向上していたため、今回2度の震度7に見舞われながらも住宅の全壊率は10%程度にとどまっています。確かに、耐震化率の向上が功を奏したと考えることができます。

地震による死者は、東灘区では人口の0.9%にあたる1471人でしたが、今回の益城町の死者数は20人で、人口あたりの死亡率は0.006%と東灘区の15分の1の比率に下がっています。全壊率が半分だったことを考慮してもかなり被害が少なくてすんだことになりますね。
この理由について福和さんは、最初の地震で避難所や屋外に避難していた人が多かったためではないかと見ています。2度目の地震の時には2000人弱が避難していたそうです。それが今回全壊家屋一軒あたりの死者を10分の1程度に下げたと分析しています。
結局今回の熊本地震で、前震、本震と大きな地震が立て続けに起きたことは、建物の被害を増やした一方で、タイミングの妙で人的被害を減らしたという見方もできるようです。

福和さんは建築基準法が地盤による影響を考慮していないことなどの問題点も示し、住宅を購入する住民自身が知識を持ち、安全に投資をしなければならないとのメッセージを参加者の皆さんに送っていました。
今回のげんさいカフェは参加者が大変多く、会場に入りきれない一部の方には隣の減災ホールに移っていただくほどで、この地方の皆さんの関心の高さを感じました。

福和さん、参加者の皆さんどうもありがとうございました。
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→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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