第19回げんさいカフェを開催しました

「変わりつつある災害時医療」

急性期医学者 松田 直之さん
名古屋大学大学院医学系研究科教授(救急・集中治療医学)

 今回のカフェは災害時医療がテーマ。東日本大震災の被災地でも活動された災害時医療の専門家・松田直之さんとの対話です。

 まず松田さんは、いま最先端の災害時医療の理解をするためのキーワードを紹介してくださいました。それがCSCATTT。
 前半のCSCAは、災害時医療を展開するために必要な要素であるCommand and Control(指揮系統と連絡網)、Safety(医療活動における安全確保)、Communication(優先情報の確認)、Assessment(医療資材等の備蓄と管理)の頭文字をとったもので、これらが現場でしっかりと確保できて初めて、効果的な災害時医療が可能になるということでした。

 CSCA が確保できたところで、次の段階=後半のTTTに進むことができます。そのTTTとはTriage(トリアージ=治療の緊急度による選別)Treatment(緊急応急処置)Transfer(患者の広域搬送)と被災地で医療スタッフが実際に行う行為の頭文字です。

 こうやってキーワードで概念を整理すると、被災地での災害医療立ち上げに必要なことがはっきりわかってきます。つまり大災害に備えて、こういう緊急展開がいつでもできるように、災害対応マニュアルの整備を含めて準備をしっかりしておかなければいけないということですね。

 東日本大震災より前に、全国の主な病院にはDMAT(ディーマット=災害時緊急医療支援チーム)が作られ、日頃から訓練をして、いざというときには被災地に緊急出動するという体制が整っていました。そして発災と同時に、全国各地から多数のDMATが出動、ただちに被災者の治療にあたったということです。松田さんたちはこれとは異なる大学間連携チームとして名古屋大学病院の一員として被災9日目から宮城県石巻市に入り災害時医療に取り組みました。現場では、広い被災地のどこに医療的ニーズがあるかをつかむことが大切だったということで、本部にある情報共有のための掲示板や、夜のスタッフミーティングが欠かせなかったということです。

 災害時医療は(特に大災害時には)ただやみくもに医師や看護師が被災地に行ってがんばるというのではダメで、しっかり体系化した取り組みが必要だということがよくわかるカフェでした。そうした研究と体制づくりが、いま地元愛知県でも進んでいるということで、次の南海トラフ巨大地震など、大災害に見舞われる前に早く整備がすすんでほしいと願うばかりです。

 今回も多くの市民がカフェに集まってくださいました。患者のトリアージ(治療の緊急度による選別)に関する質問や、愛知県内の災害拠点病院についての質問などたくさんの質問が出て対話が盛り上がりました。松田先生、みなさん、ありがとうございました。

日時:2012年12月21日(金)18:00〜19:30
名古屋大学カフェフロンテ(環境総合館斜め前、本屋フロンテの2階。ダイニングフォレスト向かい)

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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