益川敏英さんをお招きした「第51回げんさいカフェ」の開催報告を再掲します

「追悼 益川敏英先生」

益川先生が7月23日、お亡くなりになられました。ご冥福をお祈りいたします。
当センターの活動や、げんさいカフェにもご理解いただいていた益川先生にもうお会いできないかと思うと寂しい限りです。
益川先生には、げんさいカフェの第51回(第4回が台風で中止になっているため実質的に50回記念でした)にゲストに来ていただき、「減災研究者と社会」というテーマで、現役研究者らに向けた熱いメッセージをいただきました。
最先端研究の傍ら、常に社会に向けての発言を続けてこられた益川先生らしいカフェでした。
ここに、その報告を再掲して、益川さん(カフェでは先生とお呼びせずに益川さん、でやらせていただきました)へのはなむけとさせていただきます。


「減災研究者と社会」

スペシャルゲスト:ノーベル賞学者 益川敏英さん
(名古屋大学特別教授・素粒子宇宙起源研究機構長)

日時:2015年8月12日(水)17:00〜18:30
場所:名古屋大学減災館 減災ギャラリー

 今回のげんさいカフェ、公式には51回目ですが、実は第6回が台風で中止になっているので実質的には今回がちょうど50回目になります。そこで50回記念として特別ゲストをお呼びしました。ノーベル賞学者で名古屋大学特別教授の益川敏英さんです。

 益川さんは最近の新聞のインタビューに「科学者は学問を愛する以前に人類を愛さなければならない」という恩師の坂田先生の言葉を紹介しています。そこで今回のカフェでは益川さんに「減災研究者と社会」というテーマで研究者の社会的責任について大いに語っていただきました。

 益川さん自身の最初の災害体験とは1959年(昭和34年)の伊勢湾台風だそうです。名古屋市内の自宅の屋根の一部が強風で吹き飛び、すごい勢いで雨が降りこんできたということです。でも翌日にはもう学校に行っていたとか。「家の片づけをしなくて申し訳なかった」と益川さんは話されます。この時、学生自治会が積極的に被災者の救援活動に取り組み、中でも亡くなった人たちの洋服の一部を切り取って遺体の発見状況とともに記録した台帳づくりに取り組んだという秘話を紹介してくださいました。被災者の家族や親族にたいへん感謝されたということです。さらに興味深かったのは、このような救援活動に対して当時の岸信介総理大臣から感謝状と金一封が送られてきたこと。時はまさに六十年安保闘争のころで、はたして総理大臣から金をもらうべきかもらわざるべきか当時の学生たちはかなり揉めたということです。

 参加者の皆さんからは、さまざまな質問が出ましたが、特に過去の災害について聞き取り調査をしている大学院生から「研究で被災者の皆さんにお話を聞いているが、時には思い出したくないことを思い出してもらうこともある。自分の研究のためにこういうことを続けてもいいのでしょうか」という質問がありました。それに対して益川さんは「科学者は研究することが大好き。しかし現代社会では、その意味も考える必要がある。たとえば自分の研究成果が軍事目的に使われることもありうると考えなければいけない」と話したうえで、「結局いまは自分のための研究であっても、その研究成果がいつか人のために役立つと信じて研究を続けるしかない」とアドバイスをしていました。

 普段はなかなか会えないノーベル賞学者に直接質問ができるチャンスということで、いつもより数多くの方々に参加いただきました。益川さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。




cafe51

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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