減災センタースタッフブログ:「法律から考える防災・減災」(安城市 尾本さん)

はじめましてこんにちは。受託研究員の尾本と申します。今年度、名古屋大学減災連携研究センターにお世話になっています。
以前は大学で法学を研究しておりましたが、東日本大震災の直後に自治体職員となり、防災や危機管理に携わるようになって今年で4年目を迎えました。

突然ですが、災害等の社会的危機に関する法律は世の中にたくさんあります。

・自然災害への対応を主とする「災害対策基本法」や「災害救助法」
・水害に対応するための「河川法」や「水防法」
・ミサイル攻撃やゲリラ攻撃に対処するための「国民保護法」
・新型インフルエンザ等の大流行に対応するための「新型インフルエンザ等対策特別措置法」 などなど

自治体でも、さまざまな危機に対応するため、または被害を予防するために、実にさまざまな法令に基づいた体制整備を行っています。地震は代表的な危機の一つです。

(私の机の本たち)

(私の机の本たち)

特に最近は、東日本大震災や多発する自然災害の教訓を受けた結果、災害に関する法改正や計画修正が続いており、さまざまな防災体制が変革の時を迎えています。

というわけで前置きが長くなりましたが、今回は、皆さまの安全安心に関わる近時の法改正のひとつして、災害時の「避難所」と「避難場所」の関係についてお話したいと思います。

皆さま「避難所」と「避難場所」の違いをご存知ですか?

一般的には、災害時に身の安全を確保するための場所が「避難場所」であり、その後、自宅での生活ができなくなった方が避難生活を送る場所が「避難所」です。
皆さまが災害時に備えて避難先として考えている場所はどこですか?
その避難先は「避難所」でしょうか。それとも「避難場所」でしょうか?

行政もこれまで避難場所と避難所の違いをきちんと周知できていなかった現状があり、東日本大震災では、避難所に避難した後、避難所に津波が到達したという事例がありました。
それを受けて、平成25年度の災害対策基本法の改正では、避難所と避難場所をきちんと区別できるよう、それぞれが整理されています。

今回の改正法では、まず「避難場所」については災害の種類ごとに指定するものとし、どの災害に対して安全といえる避難場所なのかについて明記するものとしています。
避難して安全を確保するべき場所は、水害時の避難場所は高台、地震時の避難場所は広場、というように、災害の種別ごとに異なることが往々にしてあるはずだからです。これを法律上は「指定緊急避難場所」と名づけています。

また、避難所については、災害後にすぐさま避難する場所ではなく、災害の危難が去ってから避難生活を送る場所と位置づけ、これを「指定避難所」と名づけています。ただし、避難場所と避難所を兼ねる場合ももちろんあります。

まず、皆さまには、いつ来るやともしれない自然災害に先立ち、地域のハザードマップなどをもとに災害の種類ごとに「避難場所」がどこなのかを確認いただければと思います。
その際「避難場所」や「避難所」の名称は自治体ごとに異なりますのでご注意ください。また、どの地域にどのような災害リスクがあるのか、きちんと理解し説明できるよう、私もここ減災連携研究センターで研究させていただいていますが、避難場所については、どこがどの災害に対して安全なのかについては調査が必要なため、全国的に指定作業には少し時間が掛かっています。
ハザードマップを持ち、実際にお近くの避難場所やその周辺を確認していただくことをお勧めいたします。

そして避難場所を事前に確認していただいた上で、一番大切なのは避難せずに済むことです。まずは、自然災害による被害を少なくするために、ひとりひとりが家具の固定や家屋の耐震化を行い、また、地域の防災訓練に参加するなど地域内の連携強化に取り組んでいただきたければと思います。

あと、最後にひとつ。ぜひ一度、減災館に来てみてください。
私も受託研究員を勤めながら、自治体で防災行政に携わっていますが、過去の災害から得られた教訓をきちんと受け止めて、今後の被害を少なくできるよう、減災連携研究センタースタッフ一同の力を合わせて頑張っております。
この研究センターが取り組んでいる問題は、皆さまひとりひとりに関係のある問題です。研究センターのある減災館では、皆さまがいろいろと学習できる場所としていろいろな機会を設けております。
連携の輪がさらに広がるよう、皆さまのご来館をお待ちしております。

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