第28回げんさいカフェを開催しました

「南海トラフ巨大地震後の電力復旧は?」

交通計画学者 虎谷 健司さん
名古屋大学減災連携研究センターエネルギー防災寄附研究部門助教

企画・ファシリテータ:隈本邦彦
  (名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

げんさいカフェは、「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」との
共催で実施しています。


  今回のテーマは、南海トラフ巨大地震が起きた時の電力被害についてです。ゲストの虎谷さんの疑問は、今年5月に発表された国の被害想定がどこまで信じられるかということでした。

 国の想定では、巨大地震発生後、東海地方の89%が停電しますが、それはほぼ5日間で解消することになっています。

 でもこの被害想定は「地震や津波で発電所が被害を受けない」ことが前提となっているのだそうです。実際はどうか?2年半前の東日本大震災では、太平洋岸の発電所が津波で大きな被害を受け、東京湾岸の発電所も故障や点検のため一時発電ができなくなったのが記憶に新しいところです。

 もう一つ、これも東日本大震災で実際に起きたことですが、本震の後に繰り返し余震が発生したり、その度に津波警報が出たりすると、復旧作業はかなり遅れることが予想されます。停電が順調に回復するかどうかは、余震の起きかた次第ということになります。我々は国の被害想定よりも厳しい状況を覚悟しなければならないようです。

 さらに虎谷さんは、国の被害想定が、例えば道路交通、物流、通信、ガスなど他の分野の被害による影響を想定していない点を心配しています。例えば電柱の復旧作業をやるにしても、高速道路は関東や北陸からの応援部隊来られるような状況なのか、また国道も現場まで通行できる状況なのかなどは重要な要素になります。また現場で通信手段がないと必要な機材もわからないなど仕事にならない恐れがあります。被災地区では、作業機材や車両、作業員、宿泊場所などの取り合いになることも予想されています。

 会場の皆さんからは、巨大地震に備えて停電リスクを減らすため、伊勢湾岸に集中しているこの地方の発電所を日本海側に増設したり、各地に小規模発電所を作って電気の地産地消をはかることはできないか?原子力発電所の運転再開は効果があるのか?太陽光などの自然エネルギーの活用を図ったらどうか?などさまざまな意見が出て、研究者と市民との活発な討論が行われました。

 いずれにしても、巨大地震後に停電が起きることは必然。私たちとしては、復旧が想定よりも遅れることを覚悟して、ローソクや電池式の携帯電話充電器を用意したり、電池をたくさん備蓄したりと、自衛をはからなければいけないようです。虎谷さんありがとうございました。

日時:2013年9月3日(火)18:00〜19:30
名古屋大学カフェフロンテ(環境総合館斜め前、本屋フロンテの2階。ダイニングフォレスト向かい)

げんさいカフェのファシリテータについて


げんさいカフェのファシリテータは、NHK時代に科学報道に長く関わられた、サイエンスコミュニケーションの専門家である隈本邦彦氏(江戸川大学教授/減災連携研究センター客員教授)にお願いしております。毎回のカフェのゲストである各分野の専門家から、市民目線で科学的知見を聞き出し、分かり易い言葉で参加者に伝える事で、従来にない防災教育・啓発の実践が可能になります。

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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