第24回げんさいカフェを開催しました

「超巨大地震が起きるしくみを考える」

地球物理学者 古本 宗充さん
名古屋大学大学院環境学研究科地震火山研究センター教授

 今回は東日本大震災をもたらした2011年東北地方太平洋沖地震のようなマグニチュード9クラスの超巨大地震をテーマに、この分野の専門家である古本さんと対話をしました。

 古本さんによれば、2004年のスマトラ島沖の超巨大地震は、それまでのプレート境界地震についての学問的考え方を変えるような地震だったということです。それまで起きていた地震は、米カリフォルニア工科大の金森博雄教授らが提唱したプレート境界での地震の最大マグニチュードにかかわる経験式(プレートが生成してからの時間が短く、もぐりこみ速度が速いほど最大マグニチュードが大きくなるという式)にだいたい合致していて、この経験式によれば、東北付近の日本海溝では最大マグニチュード8前後の地震がおきやすい(それを上回るマグニチュード9クラスは起きにくい)とされていたそうです。

 ところがスマトラ島沖で起きたマグニチュード9.1の超巨大地震は、その経験式から大きく外れていて、金森教授の経験式が間違っているという可能性を強く示唆していました。当時そう考えた古本さんは、他のデータも総合した上で、「やはり日本付近でもマグニチュード9を超える超巨大地震の発生を考慮すべきではないか」と、東京で開かれた地震予知連絡会等で発表をしました。もしそこでみんなが一度立ち止まって、国の防災対策に盛り込むべきかどうか真剣に議論されていれば、東日本大震災が”想定外”とはならなかったとも考えられます。古本さんは「いまにして思えば、もっと強く再検討の必要性を強調しておけばよかったと後悔している」と話しておられました。

 会場の参加者の皆さんからは、プレートの境界の中で、地震の際に大きくずれて強い地震動を発生させるアスペリティと呼ばれる部分について「世界中のアスペリティの場所はすでに特定されているのか」「アスペリティのところは、どのようになっているのか」といった質問が出され、古本さんは「実際に地震が起こった後にアスペリティの位置が特定されることも多く、とても全体像が分かっているわけではない」「アスペリティは、プレート上の海山が境界に潜り込んだものであるという説や、アスペリティの部分が強く固着していて、そのほかの部分には水があるという説などもあり、まだすべてわかっているわけではない」と答えていました。

 古本さんは最後に超巨大地震への備えの大切さを強調、「南海トラフ巨大地震が起きれば、東日本大震災のような大津波、阪神・淡路大震災のような揺れによる都市部の大被害、さらに新潟県中越地震のような土砂災害が同時にやってくる恐れがある」として、「ライフラインや交通網が寸断されることも予想され、最悪の場合、しばらく救援物資が来ないことも考えられるので1週間分くらいの水や食料を備蓄しておいたり、いざというときの避難方法を考えておく必要がある」と話していました。

 もし巨大地震が起きれば、ご本人は何としても名古屋大学に出勤してくるそうですが(笑)、ご家族は、水と食料をできるだけ持ってご実家の高山をめざし北に逃げるように決めているとのことで、会場からは「なるほどそれは参考になる」という意見も出ていました。

日時:2013年5月8日(水)18:00〜19:30
名古屋大学カフェフロンテ(環境総合館斜め前、本屋フロンテの2階。ダイニングフォレスト向かい)

→ポスター(PDF)
※過去のげんさいカフェの様子はこちら

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