地域に住まう歴史地震愛好者を結集し情報交換を通じて来るべき地震災害に備える会

 

1. 中部「歴史地震」研究懇談会の概要

1-1 懇談会の目的

 2011年3月11日の東日本大震災での死者・行方不明者数は約2万人に達し、その半数以上が宮城県での被害である。宮城県沿岸ではリアス式海岸が広がる岩手県沿岸に比べて津波の高さはむしろ低いところが多い。犠牲者が多く出た原因は、海岸平野における人口の多さにもよるが、自治体の津波対策の不十分さや住民の津波への警戒心の低さもあったと思われる。
 そのような自治体や住民の津波への備えの甘さの背景には、そもそも来るべき地震への想定が不十分であった面も否定できない。地震後、地震学者を中心とした国の地震調査推進本部の地震想定がもう少しのところで間にあわなかったと報じられた。その元になったのは西暦869年の貞観地震による石巻平野や仙台平野での津波堆積物の研究である。ところが、郷土史の立場から貞観地震と西暦1611年の慶長三陸地震を調べ、その成果をもとに仙台平野の大津波を20年近くも前に想定して、当時の仙台市長や宮城県知事宛に津波対策を進めるための陳情書まで出されていた市民がおられたことを地元紙が伝えていた。
 なぜ、このような警告が実を結ばなかったのかを考えるとき、歴史地震の調査研究を社会に役立てることが、一握りの学者だけでは到底できないのではないかという点に気づかされた。過去の地震の解明には、文書や絵図、石碑や言い伝えなど地域に残る様々な歴史的情報の発掘が必要で、他の学問分野にもまして市民との連携が必要とされる。
 一方、市民の間でも古くから郷土の歴史に興味をもつ人は多く、中には地震や津波、さらには火山噴火や水害など歴史的な自然災害を長年調査してきた人もいる。また昨年の東日本大震災を契機として自ら勉強し中には調査をしたいという人も増えている。ところが、このような方々がせっかく調査しても成果を発表する場がなく、貴重な情報が埋もれたままになってしまうケースも少なくない。
 昨年設立された名古屋大学減災連携研究センターの大きな目的は来るべき南海トラフ巨大地震に備えるために、産官学民のあらゆる分野の人々が連携してその対策を考える場となることである。このような機会をとらえ、歴史地震について広範な立場の同好の士が集まり情報交換をしてそれらをまとめるとともに、歴史災害に対して得られた新たな知見やそこから導き出される教訓を発信する会の設立を図るものである。
 地震防災においては、多くの人々が立場を越えて「人間社会を持続させる」ということを目的に、一つの枠組みの中で実行的に研究する「知」の融合がなければならない。東日本大震災は我々に、人々がてんでんばらばらでは調査研究の成果が十分生かせないという事実を突きつけていると言えよう。本会はまさにその問題の克服を目指すものである

 

1-2 懇談会の活動方針

1. 歴史地震に興味のあるすべての市民が気軽に参加し、楽しく発表、意見交換を図れる会を目指す。
2. 会員相互の親睦を第一に、個々人の如何なる活動をも制限するものではない。
3. 年2回程度の例会を設け、提出資料は年度毎にまとめて会員に配布する。
4. 事務局は名古屋大学連携研究センターに置く。
5. 発起人・幹事
   名古屋大学 減災連携研究センター 武村雅之、都築充雄、虎谷健司
   名古屋大学 環境学研究科 西澤泰彦
   名古屋大学 地震火山センター 山中佳子
6. 活動内容について
   年2回程度の会合を持ち、会員から調査研究成果を発表する。
   開催時期:5月下旬~6月上旬と、11月下旬~12月上旬 (2回/年度)
   会合の配布資料と議事録を年度毎に製本し、活動報告書として会員に配布する。