第110回げんさいカフェ(オンライン)を開催しました

シリーズ東日本大震災から10年②
東日本大震災から10年ー減災連携研究センターは必ずやってくる南海トラフ地震にどう立ち向かうか
(減災館第30回特別企画展「東日本大震災から10年ー必ずやってくる南海トラフ地震にどう備えるか」との連携企画)

ゲスト:地震工学者 福和 伸夫さん
   (名古屋大学減災連携研究センター長・教授)

日時:2021年 1月6日(水)18:00~19:30
企画・ファシリテータ: 隈本 邦彦さん
   (江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)

 減災連携研究センターがスタートしたのは東日本大震災の前の年、発足してもう10年が経ちました。そしてセンターと地域との連携活動の一つ、このげんさいカフェも、もうすぐ10年になります。
 そこで今回は、発足からずっとセンター長をされている福和伸夫さんに、この10年を振り返っていただき、改めて南海トラフ地震にどう備えるか、お話いただきました。
 前回に続き、特別企画展「東日本大震災から10年ー必ずやってくる南海トラフ地震にどう備えるか」との連携企画です。


 カフェではまず、東日本大震災以降の10年で、日本の防災対策がどう変わったかを考えました。
 津波に関しては、先月のカフェでやりましたが、3.11でM9の最大クラス=いわゆるクラス2の津波が実際に起きたということで、次の南海トラフでもそれをしっかり想定しなくちゃいけないという考え方が広がった10年でした。基本的には、巨大な津波に頑丈な堤防で対抗するのではなく、逃げて命が助かる対策=津波予報の高精度化や避難路の整備、津波避難ビルの指定、津波避難タワーの建設などを充実させてきました。

 もうひとつ、東日本大震災では、(ゆらゆらと揺れる)長周期の地震動で、超高層ビルなどが大きく揺れたという教訓がありました、その対策の必要性が認識されたのものこの10年です。
 福和さんが今回紹介してくれたのは、大阪府の咲洲庁舎の事例。東日本大震災で、震源から直線距離で700キロ以上離れたこの52階建てのビルが、地盤の揺れと共振して、地上の震度より2つくらい大きい震度の揺れに見舞われました。エレベーターの閉じ込めなどの被害が出ました。
 いま建てられている超高層ビルは、長周期の地震動をある程度想定した設計になっていますが、比較的以前に建てられた超高層ビルは建設したときにそういう想定が行われていません。これからどうしていくか課題が残っているということです。

 また東日本大震災の人的被害を、いま改めて見直してみると、福島県では、地震津波の直接死が約1600人なのに、その後の避難生活での震災関連死の数が約2300人と、直接死を上回っています。岩手・宮城の両県の関連死が、直接死の1割くらいなのに比べると際立って多くなっています。原発事故直後の混乱や、その後の避難生活の長期化がどれくらい人の命にかかわるかということが改めてわかります。
 この10年で、自治体の避難所運営が少しずつ進歩し、段ボールベッドが導入されたり、福祉避難所の指定箇所が増やされるなどしている一方で、この間、人口の高齢化はさらに進み、自治体職員が減少するなど、状況がむしろ厳しくなっている側面もあります。特にこれから我々が必ず直面する南海トラフ地震では、東日本大震災の被災地に比べ、人口が多い地域が被災するので、避難所の数や収容能力が足りなくなることも予想されています。
 さらにいま、新型コロナウイルス感染症の拡大で、避難所での密を避けなければいけないことも、避難所不足に拍車をかける可能性があります。


 福和さんは以前から、わが国では「災異改元」といって、天変地異の後に、人心一新をはかるために行われた改元が多いと指摘されていましたが、今回あらためて調べなおしてみると、巨大地震にいくつかの内陸地震が重なったり、疫病が同時に起きているという事例も多いことがわかったそうです。それを考えると、いままさに日本と世界が、新型コロナという疫病によって、社会的にも経済的にも痛めつけられている中、ここで巨大地震に見舞われると、たいへんなことになると予想されます。
 そのダメージを少しでも減らすまえに、見たくないものを見ないようにするのではなく、互いにホンネを語り合うことで、減災に向けた取り組みを地道に進めていくしかない、と福和さんはおっしゃっています。
 オンラインでやったこともあり、今回のカフェには過去最高の220人がご参加くださいました。福和さん、参加者の皆さんありがとうございました。




→ポスター(PDF)

→過去のげんさいカフェの様子はこちら

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