近藤ひろ子先生(防災教育スーパーバイザー)のブラジル紀行⑦

3月16日(土)
オウロプレット市の土砂災害リスクエリアを、市のCivil Defense(市民防衛)局の方たちの案内で、視察しました。

リスクエリアに向かう間も、土砂崩れあとがいたるところにあり、粘土質の赤土がさらけ出ていました。
多くのリスクエリアはスラムにあり、私たちの視察地も例外ではなく、市警察の白バイの先導、パトカーの護衛で向かいました。
(スラムの入り口で、私たちが車から降りたときにあったこと。酒or薬物で訳のわからないことを言いながら私たちに近づいてくる男性。すぐに、白バイの警察がその男性をとめようと動く。それでも、私たちに近づこうとしてくる男性。白バイの警察官が拳銃を出す。男性、何とかあきらめて私たちから離れる。私たち一行の気持ち、“どきどき”から“ああ、あの男性も含めてみんな何事もなくて、よかった”へ)

<市のCivil Defense(市民防衛)局の土砂災害専門家の話>
雨が降ると、表層と粘土質の赤土層の間に水がたまり、表層がすべる。
大雨のときは、一気に表層が滑り落ちる。
大雨でなくても、少しずつ少しずつ表層が滑り落ちている。
斜面に建物が建っているところは、建物の一部または建物全体が、滑り動いている。
建物の一部の場合は、ひび割れになって現れる。そのまま放置しておけば、いずれ建物は壊れる。
建物全体の場合は、その家の下部にある家の方に滑り動いていき、ついには下部の家を破壊する。
それが次々と連鎖し、大規模な土砂災害を引き起こし、人命を奪う。
そうならないように、ここに住む危険を住民一人一人に訴えている。
その声かけで、引っ越していった人もいるが、自分の家のひび割れ箇所を見ても「まだ大丈夫だろう」と、なかなか本気にならずそこから動こうとしない人も多い。
ここの住民にそのような危険を伝え、わかってもらうには、まず、住民の中に入り、心を開いてもらわないといけない。そのために、足繁く通い、同じ仲間として話ができる関係になることが大切だ。

学問も積んだ土砂専門家の彼は、私たちの視察中も、大人たちの世間話の輪の中に、子どもたちのサッカー遊びの中に、決しておごるようすもなく自然に入っていきました。彼の姿から、また一つ大切なことを再確認した私です。

そこに住む人の動きやとらえ方、考え方、またその方策を進めるためのお金など、東日本大震災の被災地と共通するものも見ました。防災に携わるものとして、それをどう乗り越えて「命」を守っていくか、日本・ブラジル共に考えて行かなくてはならない大きな課題です。

土砂で押しつぶされた新築したばかりの家(まだ住んでいなかった)

土砂崩れ現場で説明をする市の土砂災害専門家

ひび割れて住めなくなった1階の上に、2階を建ててしまった家

これだけずれてきているのに…

引っ越した家(窓枠だけは外して持っていった)

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